オシムファンへ
★★★★☆
02年の出版物が和訳され06年に出版された作品。オシムのインタビューとともに、それまでの人生を振り返っている。ほとんどがオーストリアの記者の質問にオシムが答えていると言う形式のため、説明文もあまりなく、読みづらい解釈も多く、読むのに疲れる内容だった。しかし、オシムを知りたいと言う人にはもっとも適した本と言える。
最後のインタビューは、4年前オシムが代表監督になって7試合を終えたころに録られたものだった。現在はすでに2人目の監督が決まった。果たしてザッケローニはどのように監督をまっとうするのだろうか。
サッカーのみならず社会全般を思索するための深い示唆を与えてくれる
★★★★★
皮肉に満ちた、時に分かりにくい表現でありながら、底流にサッカー及びサッカー選手への愛情が流れていることが、オシムの言葉が愛される理由だろう。本書はオシムがシュトルムグラーツの監督時代にオーストリアの教育学者とフリーライターの二人が彼にインタビューしたもの。
サッカーを中心に半生、祖国、宗教、ナショナリズム等についてオシムが独特の表現を駆使しながら語る。商業主義に陥っている現代サッカー界、ともすればナショナリズムの発現になりがちなワールドカップ、故郷を戦火に陥れたメディアの罪等についての批判的かつ冷静な指摘はサッカーのみならず、社会全般の出来事を考える上で深い示唆を与えてくれる。
いよいよ、オシムのファンになってしまった
★★★★★
オシムが、オーストリア、グラーツの監督をしている時に行った、インタビューをオーストリアのジャーナリストがまとめた書である。原書は2002年に、つまり、オシムが来日する前に刊行されている。
伝記の部分は『オシムの言葉』とかなり重なるが、オシム自身の言葉で語られる分、異なる面を知る事が出来る。オシムの語る言葉は、必ずしも明快ではないので、分かりやすくはなっていないのではあるが。彼は、おそらく、必要以上に明快に語る事を恐れているのだろう。人生で起こる事なんて、そんなに明快に割り切る事なんて出来ないのだ。
本書でオシムが分類すればムスリムとなる事を知った。本人は、自分はむしろアナーキストだと言っているし、決してセルビアに対する単純な憎悪を表に出さない。オシムがいかに理性的な人間であるか、感じる事が出来た。
いよいよ、オシムのファンになってしまった。
オシム監督の考え方が分かりました
★★★★★
現サッカー日本代表の監督であるオシム氏がオーストリアのクラブチームの監督だった頃の本です。
サッカーについては選手時代のことは少ないですが、オーストリアでの監督時代の記述は多いです。
また、故郷の紛争に対するコメントもあり、非常にめずらしいものだと感じました。
普段は多くを語らないオシム監督の考え方というのが分かったような気がします。
また、監督としてのすばらしい経歴があるということも分かりました。
オシム前史
★★★★☆
本書は、オシムがジェフの監督就任要請を受けて来日する前年(2002年)、
この時はまだオーストリアのシュトルム・グラーツを率いていた彼に対して、
2人の記者がおこなったロング・インタビューをまとめたものである。
本書の監修者でもある木村元彦氏の『オシムの言葉』が、
まずはジェフ時代のオシムの手腕にウェイトを置きながら、
旧ユーゴにおける彼の生い立ちや選手時代に加えて、
代表監督時代や92年以降の内戦などにもまんべんなく言及した、
「通史」的な伝記という側面を持っているのに対して、
本書の特徴は、来日以前の「前史」としての
シュトルム・グラーツ時代(1994-2002)に焦点を絞って、
さまざまな主題についてオシム自身に語らせている点にあり、
オシムに興味があるなら両方を読み比べてみても損はないと思う。
訳文がやや硬いことや、サッカーそのものよりはむしろ、
政治・宗教・戦争絡みの「重い」話題が多いこと、
著者であるオーストリア人ジャーナリストの関心領域が
やや日本人とズレているように思えることなどもあって、
読後に『オシムの言葉』ほどの爽快感はなかったが、
これは著者たちの責任というよりは、
現在の欧州サッカーが抱える様々な矛盾や問題点が
本文中で容赦なく浮き彫りにされるとともに、
(・今や巨大ビジネスの対象となったサッカーの、とめどない商業主義化
・西欧の金満クラブの食い物にされる、旧東欧諸国のクラブと選手たち
・サッカーを利用した排他的な民族主義の高揚と、人種差別の横行……etc.)
それらに対してオシムが感じている苛立ちが
ダイレクトに伝わってくるところに、おそらく原因がある。
オシムが遠い日本にまで来たのには、欧州のこうした現状に
いささか嫌気がさしていたこともあるのでは、という気もしないではないが、
筋金入りのペシミストであるはずの彼の言葉に、
不思議と人を元気にさせる力があるというのは、
以前から折に触れて感じてきたことでもあって、
今後、彼がどんな日本代表を作るのかにますます興味が湧いた。