アヴァンギャルドとは何か?
★★★★★
権力者のお抱えでありながら、時代の前衛芸術家であった千利休という人について述べながら、映画「利休」の脚本家である筆者の、本分である「前衛芸術」について書いた本。他のレビューにも書いてありますが、非常に面白いです。
「決まり通りに作法を反復することだけが茶道ではないだろう?」
という疑問は、家元制度が確立した現在では何か捻くれ者のように聞こえますが、これを読んで、その理由が分かりました。
映画「利休」の脚本のなかで著者は、切腹を前に利休が楕円形の茶室という新たな創意をひらめく、というエピソードを書いています。しかし、わたしの考えでは、茶の湯のなかで冒しうるすべての創意工夫を出し尽くした利休が茶の宗匠としては用済みになり、政治に関わって来たので煙たく思って、秀吉は利休を切腹させたのではと考えています。切腹した利休は、やれることをすべてやり尽くしたかつての「前衛芸術家」として、意外に従容と死んでいったのではないかという読後感でした。
つまり、利休の死とともに前衛芸術である「茶の湯」は死んで「茶道」が始まったので、わたしたちは延々と既存の「茶道」を反復するしかなくなったのでした。
かなり面白い
★★★★☆
小生は、千利休の名前は知っている程度であるが、本書を手に取る人のほとんどは、そんな人達ではないだろうか?だとしたら、GMS氏のレビューは酷すぎる。「著者の教養と世界観があまりに浅く」というのであれば、どのように浅いのかをきちんと述べなければアンフェアである。更に言えばご自身の深い世界観を開陳べきでしょう。言いっぱなしでは、未来の読者に誤解を招くだけです。
「著者が他の本から読んだことを適当に羅列しているだけ。 独自の哲学を披露しているわけでもない。」とあるがこれもとんだ言いがかりというべきです。二つの重心の話、他力の思想など納得できる新しい観点ではないのでしょうか?しかも、ちゃんと参考文献も載せている。
「そのブーブーと紙の震える音に、何かどうしようもなくやるせない感情をもったのである。(143頁)」
このような見事な文章がところどころ散りばめられており、さすがに芸術家?の感性と感心させられ、これだけでも読む価値があると思いますが、如何?
”やるせない”なんて言葉はめったに使えませんよ。
千利休という名を借りた 羊頭狗肉
★☆☆☆☆
千利休について、何か深く調べたわけでもなければ、
新しい情報を載せているわけでもない。
著者が他の本から読んだことを適当に羅列しているだけ。
独自の哲学を披露しているわけでもない。
著者の教養と世界観があまりに浅く、
千利休について何か深いものを掴める内容では全くない。
ただし、著者の前衛芸術に対する姿勢や哲学は共感はできないが、
読む価値がないとも言えなくもない。
しかしながら、千利休という名をかたるには
著者の芸術に対する世界観があまりにも軽薄すぎる。
タイトルを、「私の前衛芸術に対する考え」とでも改めるべき。
時間と金の無駄であった。
赤瀬川氏の魅力満載
★★★★★
素晴らしい本。若い時、デザインを学んだ中で茶道や利休の魅力と謎に出会い、そして25年後、この本に出会った。その凹凸のある説得力。非常に平易でふざけているような文節と、滝の上から突き落とされるような鬼気迫る文章とが交互に繰り返される。著者の「マンガを読んで研究した」というイントロからは想像も出来ないシャープな切り口による「結論」に心底感動したことを思い出す。最後に「この本は何の史料にもならないだろう」と著者が謙遜しているが、まさに上記の魅力と謎の本質に最も迫ったものとして、多くの茶道愛好家やクリエティブな仕事をしている人たちに必読書として薦めたい。
解釈の広さ、笑いの視点
★★★★☆
茶の湯の事なんて全く知らなかったのですが、まんが「へうげもの」(山田 芳裕著)を読んで以来、凄く気になるようになりました。また、その当時の人物、文化、歴史の事が、いつもの通り私にはマッタクわからないので、ちょっとネットで調べていたら、気になったのが、赤瀬川 原平が書いてます!!トマソンの赤瀬川さんですよ!!で、興味が湧き、読んでみました。まだ完結していませんが、マンガ「へうげもの」も、かなりオススメ致します。
千利休という人を路上観察学会の、物事を様々な角度から考え、なお、楽しもうとする方からの考察が楽しくないわけありません。
要約してしまうと面白くないので、興味のある方には是非読んで頂きたいのですが、まるで禅問答です。そして日本人論にも話しは広がります。考え方の柔軟性が求められる本でありますが、レベルは違いますけれど、山本 七平著「『空気』の研究」と同じくらいの目からウロコ本です。様々なことに波及する考え方を分かる本でもあり、それでいて笑える楽しさを両立させられる稀有な感覚の持ち主、赤瀬川さんの本です。反復する儀式の、あるいは○○道のような真面目な哲学的面白さを、そして真面目が滑稽に繋がる、笑える側面もまた認められる方におススメいたします。