まず最初は、外資系投資銀行から見た日本の金融再編です。アメリカ等の規制緩和や金融界のM&Aをモデルにしながら日本の金融界がどのように再編されてゆくのか、UFJHとMTFGの合併の実例なども踏まえながら、投資銀行の視点を通して金融界再編全体像が見えるように非常にわかり易く書いてあります。
ふたつ目は、あまり素人にはなじみのない実際の投資銀行がどのような組織の関係で成り立っているのかが詳細に書かれてあります。外資系投資銀行の組織図とその役割の全体像を理解するには大変よくかかれてありますが、その現場の空気が伝わるような筆者の体験談などは皆無です。外資系金融機関の空気を感じるのであれば、ポール スタイルズの「さよならメリルリンチ」などがよいのではないでしょうか。
最後に、外資系投資銀行の業務であるM&AやVARに基づいた投資戦略などが綴られています。VARの説明などは理論の説明に跳躍が多く、また具体的にどのように現場の人間の判断に生かされているのか記述が不十分で不満の残る内容でした。またM&Aについては筆者の経験談がなく一般論に終始しているように思われます。M&Aに関してはやはり、実際のM&A経験がある辣腕企業弁護士が書いた「ビッグ ディール」のような本で理解したほうがよいと思います。
内容の後半部分にはかなりの不満が残りますが、前半の投資銀行の視点から見た日本の金融界の再編の部分などは非常に良著だと思います。