「at Home」はまずまずだけど
★★☆☆☆
「at Home」は設定の妙が効いていてセリフ回しも面白い。
しかし、淳の両親とのやりとりの底にある部分の書き込みが浅いので、共感しにくい。
そして、この表題以下に続く3作品は読む価値があったかどうかも疑わしい。
作者も出版社も推敲したのだろうか?
「日曜日のヤドカリ」
主人公と「弥生さん」に対する言葉遣いと「その他の人々」に対する言葉遣いの落差が激しく感情移入が難しい。後半部分では興醒めも。
「リバイバル」
一番の胆の部分であるラストのヤクザ同士のやり取り。状況設定や誰がこのセリフを言っているのかが分かりにくい。
「共犯者たち」
時間軸が分からない。込み入って来ると誰が言っているセリフなのか分からない。読み手を置いていってしまうような感覚的な文章回しが多い。あだち充を彷彿とさせる部分が結構あるが、文章で表現するのであれば、補っていかなくてはいけない部分の説明が欠如している。
おままごと遊びではなく、「人形を使ったおままごと遊び」だったらすぐに理解できたかもしれないが、リカちゃんの下りは「???」だった。何度か読み返して、ようやくリカちゃん人形を使ったおままごとだと理解がいった。また、擬態語も多く興醒め。究極、「わん」はないだろう……。
何が共犯者なのか?共感者を得ることが難しいのでは?
今の時代は、こんな書き方でも小説家になれるのかと、心から感動した作品ではある。
状況が見えない。
心情が見えない。
他の評判が良い作品を1作は読んでみようと思うが、それでも首を捻るようだったら、……考えたい。
4つの家族小説
★★★☆☆
「at Home」「日曜日のヤドカリ」「リバイバル」「共犯者たち」の4話収録です。
風変わりなそれぞれの家族。その家族の絆を描いた家族小説です。
どれもハッピーエンドです。
「at Home」は非常に良かったと思います。
いきなり衝撃的なスタート、そして展開、結末、すべてがお見事でした。
しかし、全体的に、なんだか微妙。
登場人物が最後の方で語る、大事なセリフの数々。
それが、胸に染みそうで、染みてこない。
心に届きそうで、届かない。
理解できそうで、なんだかよくわからない・・・。
あと一歩って感じ。
でもその一歩が大きくて、
結局なんとも思わないまま
スラスラ読んじゃった気がする。
チェーンポイズンやWILLの時の、
あの感動はありませんでした。
いつも、読後に心にちゃんと
何かを届けてくれる本多作品ですが、
今回はフワフワしっぱなしで
10日も経てば消えてしまいそう。
期待が高かったのかもしれません。