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他者の苦痛へのまなざし

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: みすず書房
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陰影に富んだ洞察 ★★★★☆
ソンタグの初期の代表作『写真論』の流れにある、重要な作品。複製される映像と戦争報道、見る者との関係性を考察していく。戦争における死者の写真など、「客観的記録」であると同時に個人的証言である映像が共同体にもたらす衝撃、またそれが磨耗する経緯、そして忌まわしいものがもつ誘惑力を、バタイユやドゥボールなどに言及しつつ述べる。みじかいが、陰影にとんでいる。
安易に考えすぎる人々 ★★★★☆
戦争の写真を見たとき、それが悲惨であればより人は被写体に同情をよせる。それと同時に、自分がそして大事な人はそんな悲惨な目に遭わなくてよかったと胸をなでおろす。さらに、悲惨な写真を見ようとするとき、そこには好奇心、一種の怖いもの見たさという人間の俗悪な心情があるのではないか?

著者は、自分とまったくの他人である人たちの苦痛を本当に理解することができるのだろうか?またその手段として写真はどのように被写体に向かうべきなのか?、と自らの煩悶を語っている。

ベトナム戦争以前の有名な戦争写真はだいたい写真家やその現場の人たちによって作為的に撮られた。この記述を読んで私は落胆したが(やっぱり劇的な場面はそうそう撮れないよなぁ)、著者のソンタグ氏によれば、この感情自体がもう戦争写真を単なるエンタテインメントとして捉えているだけで、一向にそこで起きている事実を理解しようとしていないことになるんだろう。
これからは、上記のことを肝にめいじて写真をみることにする。

人間の尊厳について考える本 ★★★★★
自分の痛みを感じることはできる。しかし本当に他者の痛みを感じることはできるのか。ソンタグは映像を通して、たやすく他者の痛みを目の当たりにする現代人の感覚を問い直す。「人の気持ちを考える」とき、それは同情になっていないか。本当に人の尊厳を認めるということはどういうことかを本書は静かに語りかける。現代の日本人では、作家の高村薫に似た感覚を感じた。