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ル・シネマ~フィルム・ミュージック

価格: ¥1,050
カテゴリ: CD
ブランド: ワーナーミュージック・ジャパン
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ライナーの中で一曲一曲にコメントを付けていて、力の入り具合が分かる ★★★★☆
1996年5月・11月、ベルリン、テルデック・スタジオで録音。ピアノは盟友オレグ・マイセンベルグで映画で使われた音楽を二人の組み合わせでやって見せようという企画である。クレーメルはライナーの中で一曲一曲にコメントを付けていて、力の入り具合が分かる。

クレーメルのディスコグラフィは大体以下の4つに分類できると思う。
1.名曲の王道を行く録音
2.シュニトケに代表される現代音楽の発掘と初演
3.シューベルトの全作品の網羅
4.ピアソラに代表される現代ポピュラーの佳曲の自らによる解釈

で本作は4にあたるわけだが、5曲目の武満徹の作品から7曲目のショスタコーヴッチの演奏はむしろ2の様な世界になっていて愉しみきれない仕上がりになっている。二人の演奏は余りに上手く、ステファン・グラッペリのヴァイオリンのような愉しみ方は無理なのだろうが・・・、もう少し羽目を外してもいいような気がする。5-7曲目を外すか変更した方がよりコンセプトに近いのではないのかな、と思った。
映画を愛するヴァイオリニストが音楽で書いた日記 ★★★★★
 このCDの解説文中に、クレーメルの言葉が有るので紹介したい。−−映画は私にとって芸術です。この芸術の巨匠たちから私は音楽へのインスピレーションも与えられています。ベルイマン、ヴィスコンティ、フェリーニ、アントニオーニ、オーソン・ウェルズ、黒澤明のような著明な映画監督は、私が表現力や芸術の劇的核心を求めてゆくとき、しばしば大きな参考になります。このディスクは映画音楽のアンソロジーではありません。そこに私の関心があったとすれば、かなり多くの作曲家が抜け落ちていることになります。『ル・シネマ』の選曲にあたって、私は映画との結び付きが納得させられる音楽、ヴァイオリンで弾ける音楽、そして何よりも感情と強く結びついた音楽を優先させました。(中略)このディスクは、映画ファンであもある一人のヴァイオリン弾きが音楽でつずった日記なのです。(ギドン・クレーメル(本CDの解説文より))−−
 クラシックの演奏家、作曲家の中には、映画を音楽よりも一段下の物として見下す人が居る。クレーメルが、その様な音楽家の一人ではない事は、このCDの解説に収められたクレーメル自身の上の言葉から明らかである。
 最初の『スマイル』(映画『モダン・タイムス』より)を聴いた瞬間から、私は、このCDの虜に成った。武満徹がタルコフスキー追悼の為に書いた『ノスタルジア』も素晴らしい。クレーメルにとって、映画がどれほど大切な芸術であるかを知らされる宝の様な名盤である。

(西岡昌紀・内科医)