多彩にひろがる蒸機写真の博覧会
★★★★★
1976年に出たものの準復刻。
ご本人のブログによると構成が変更されたりページの追加が行われており、サイズもA5版(元の本は26センチ×26センチ程度)。手軽な価格にして長く書店店頭に、ということだそうだ。とはいえ特別版で大判がほしいとは思う。
蒸機を被写体にしているといっても、「広田尚敬 鉄道写真集『Fの時代』」や「昭和三十四年二月北海道」は白黒が支配し、こちらはカラー。例によって有無を言わせぬ作品が並ぶ。今となっては時代の証となった情景、迫力ある流し撮りやクローズアップ、優しさを秘めた風景、極めつけにいまだもってアヴァンギャルドな輝きを放つ構図、と現在に続く様々な切り口、引き出しの多さを見せつける。
しかも奔放なまでに繰り出される写真は束になってもまとまりのない群れにならず、一本筋が通っている。これらの技と心が広田尚敬の豊饒な世界を育んでいる。
(2010.5 追記)
1976年刊行のオリジナル版(当時の価格6500円)を入手した。
比較してみると、ずっしりと重くがっちりとしたオリジナルに対し「Cの時代」は半分の面積と厚さになっていてはるかに軽量。
写真の風合いはオリジナルはもちろん大きい写真なのだが、35年の時を経たせいか印刷技術の相違か意外に穏やか。
対して「Cの時代」の方が鮮明で鋭く、それがある種前衛的な要素を強調しているように思う。