現在入手できるパーリ語辞書は他にないと思うので、パーリ語を学ぶ人は必携だと思います。巻末のパーリ語略文法もとても役に立ちますので、これ一冊あればある程度パーリ語経典の翻訳ができると思います。ただし漢文経典の知識を前提に書かれているため、私のような漢文経典を知らない者には意味不明の訳語がたくさんあります。形容詞なのに訳語が名詞だったりするところもやや不満です。

以前より水野先生は「中辞典程度のパーリ語辞典を出したい」と仰っておられたようですが、本当に増補改訂版が出たのにはビックリです。100歳を超えておられるのでは？驚嘆します・・・。
前の辞典より20頁ほど増えてますが、今回のは組版がややゆったりとしているので、実際にどれ程の語彙が増補されたか不明です。主に南方上座部の教理学説に関する語彙が収録されたそうです。
持ち運びに便利で、語彙もかなり豊富だし、文法摘要も付いているので、パーリ語を学ぼうとする方はまずこれを手に取られると良いでしょう。
ただ、訳語は漢訳語（？）をそのまま挙げているものも多く、初学者向けとは言えない面もあります。例えば「欲界善異熟」と言われてもちょっと困ってしまいますが、ただこういう述語をいちいち説明していたら、このサイズでは収まらなかったという点はあるのでしょう。
値段が以前より大幅に値上りしたのは残念。初学者用にも手に取り易くなるよう、値上りは極力押さえるべきではなかったでしょうか。無論これは出版社の問題ですが。この辺を差し引きして☆4つということで。