アラブ、イコール、イスラムではない
★★★★☆
少なくとも大事なのはアラブ、イコール、イスラムではないこと、つまりイランの革命と民族主義、トルコの台頭、トルコとクルドの対立、エジプトはアラブではないという、古代文明に端を発する民族主義、これらはイスラム教という宗教と各国の民族主義の対立の結果であり、イスラエルもこのような外的要因とは離れられないのであるということを知っておかなくてはならないと思います。もちろんインドやパキスタン、インドネシアはアラブではありません。著者は北方のイラン人、トルコ人などの非アラブ人と南方のアラブ人をはっきりと分けています。キリスト教の国なのにイギリス、フランス、イタリア、ドイツがなぜ違う国なのだろうかと聞いてみて答えが出ないようなものですね。民族主義と国家、つまり民族国家の関係性ですから。
著者は砂漠で遊牧を主とする地域にいきなり石油がわくと、最初は消費することがほとんどないため、産出の技術も消費も日本などの海外に頼り、当然輸出されるが、自ら工業化することになると自分で消費するために、当然輸出をしないようになり、経済と民族主義は結びついた結果、日本は石油ショックのように、混乱に陥るのである。しかしアラブは客観的存在として実在し続けるのだから、まずアラブを知ることから始めるべきだと主張しているのだと思います。