なんのための学校なのか?当然のように学校に行く、会社に行く。じゃぁどこかに帰属していない人は、人間の資格がないのだろうか。逆に国家が管理する学校のような組織の中で何も学ばなかった人は、生きている権利がないのだろうか。
残念ながら、現在社会の最大公約数的常識は、上の疑問に対して「是」と回答するだろう。
この本は少なくとも、理不尽な社会の重圧に悩む当事者、親、そのほか少なからず係わり合いのある人たちへのひとつの希望の持てる参考本にはなると思う。
訳知り顔の専門家が書いた本ではない。一番の注目点は、当事者自身が書いたことに尽きる。書いた当事者に向けて、結局は社会的に「立派」だと認められるポジションに辿り着いた「限られた不登校のエリート」じゃないか、と揶揄する声があったとしても、それは重要な問題ではない。
重要なことは、かつての「不登校児」は、成人した後も生きてきた。そしてこれからも、長い長い人生をそれぞれに生きていく。この当たり前の事実について、できるだけ多くの人に思いを致して欲しいということである。その意味で、この本は必須の一冊となるだろう。類似の本が他にない現状では。
5つ星にしなかった理由は?と問われたら、「vol.2、vol.3の発行を期待しての余韻である」と答えたい。