考えさせられる内容ですが、一方向の見方しかありません
★★☆☆☆
不登校という社会問題に対して、著者の体験を元に書かれた本です。フリースクールを自身で開設し、運営しているという行動派の方です。ただ、内容的には、不登校の子に対して、学校不要論というか、「無理に学校へ行かせる必要は全くない」という立場で書かれています。題の通り、不登校という生き方のみです。そのため、この方向や考え方については知ることができますが、いろいろな不登校への対応の仕方、方策は書かれていません。また、著者の不登校への考え方で貫かれていますので、学校教育への不満や不信感、不要論というものが色濃く出おり、「学校への登校を進めては・・・」ということは書かれていません。もう少し柔軟な考えや方策は、ないのでしょうかとも思います。
子どもを苦しめ、追いつめるのは、もうやめましょう
★★★★★
著者は公立小学校の教師を22年間務めた後、不登校の子どもたちを受け入れる「東京シューレ」というフリースクールを開設しました。
著者自身も、我が子の登校拒否を経験したことがあります。著者の息子は、無理して登校しているうちに、とうとう拒食症になってしまいました。
拒食がはじまって3ヵ月した頃、子どものありのままを受け入れることを大切にする児童精神科医を訪れた著者は、目からウロコの経験をします。
ふつうに2時間ほど話をしただけに見えたのですが、面談が終わったあと息子は「腹減った、おにぎりが食べたい」といったのです。
「僕は僕でよかったんだね。渡辺先生に会ったら、そう思ったよ」
といった息子は、その日から普通の食事ができるようになりました。
学校信仰をやめること、それが本当の不登校への対処法、と著者が開眼した瞬間です。
何が何でも学校に通わなくてはいけない、という“常識”の呪縛はたいへん根強いものがあります。
本書に登場した実例の中でも、最も切なかったのが「廊下登校」です。
その子は教室に入ることができなくなり、お母さん同伴で廊下で授業を聞くようになりました。休み時間には子ども達がジロジロ見ながら通りすぎ、風がトンネルのように抜ける冬の廊下は、耐え難い寒さでした。
「お母さん、がんばってますね」と先生からほめられ、歯をくいしばって続けていましたが、ある朝、とうとう二人とも玄関から出られなくなりました。
「何のためにあんなつらいことをやってきたのだろう。このつらい一日
一日を乗り越えていけば、いつか皆と同じように教室で授業を受けら
れるようになると信じてやってきたのに逆だった」
との母親の言葉には胸をえぐられます。
学校に行かなくたっていい。子どもを苦しめ、追いつめるのは、もうやめましょう、という著者の信念に貫かれた一書でした。