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村上朝日堂はいほー! (新潮文庫)

価格: ¥483
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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意図的に軽さを抑えて ★★★★☆
村上朝日堂第二弾。
安西水丸とのコラボはまだまだ続く。
この本は「村上朝日堂」と違って「ハイファッション」という雑誌に掲載された文章。
軽さは変わらないが、意図的な軽さを押さえて、村上春樹らしいエッセイ集に仕上がっている。
改めて読み返すと、「そうなんだ、なるほどね」という事実をいろいろ知ることができて面白い。
村上春樹の夢について。
彼の当時の夢は「双子の姉妹と付き合うこと」。
なるほどね。
「1973年」では確かに双子が重要な役割を果たしていた。
そして彼は実際に「スペースシップ」と言う名の古いピンボールを所有していたことがある。
なるほどね。
これも「1973年」だ。
彼は自分の身を削りながら書くタイプの作家ではないが、やはりこうやって何らかの形で作品が彼の人生に関わってきていたことがよくわかる。

そんなこととは別に、現在議論になっている教育の問題について20年以上前から彼はこんなことを言っている。

普通の6歳の子供がどうしてバイリンガルにならなくちゃいけないのか僕には全然理解出来ない。
日本語もちゃんとできない子供が表層的にちょこっとバイリンガルができてそこにいったい何の意味があるのだろう?
何度も言うようだけれど、才能かあるいは必要があれば、子供英会話教室に通わなくたって英会話は人生のどこかの段階でちゃんとできるようになる。
大事なことはまず自分という人間がどういうものに興味があるのかを見定めることだろう。
日常生活は宇宙よりもひろい? ★★★★★
引っ掛からない人には全くおもしろみのないエッセイかもしれませんが、
山羊座のA型について事細かに自嘲してみたり、
こどもの頃「記者会見」を「汽車会見」と思い込んでいたりする話には
「こんなに感覚が近い人が世の中にいるのだ!」と勇気づけられました。

きっと世界のどんな秘境を探検するよりも
日常生活を掘り下げていくことの方が
おもしろい発見がたくさんあるのだなぁ、と思いました。

☆私はこどもの頃「台風一過」を「台風一家」と思い込んでいました
どうでもいい事柄、するどい洞察眼に ★★★★☆
村上春樹氏のエッセイ集。
小説の主人公達とはちょっと違った脱力感に満ちあふれている。

氏のこだわりやら、好みやら、趣向が垣間みられると同時に
どうでもいいものごとに対する鋭い洞察が描かれている。
確かに交通安全の標語は無駄だし、役に立たないと思う。
代替案?として
連れ込みに、「終わると虚しいでしょう?」といったコピーを掲げるのに激しく賛同したい。
たぶん、これに触れた人は、同感の意がわき上がると同時に、負け時根性がでてきて
普段と違うコトおよびになるのではないかと想像する。
おそらく10人中5人に対してそういった効果が発揮されるのではないかとありありと妄想してしまう。
同時にその連れ込みはアバンギャルドな一夜を過ごせると評判になるかもしれない。

まあまあ
そんなコトすらも考えさせられる。楽しいエッセイです。
うさぎ亭のこと ★★★★★
 このエッセーで取り上げられているコロッケ屋の「うさぎ亭」は名高い店だ。

 どこにあるのか、本当の名前は何なのかを村上は明かさない。ここで僕は「風の歌を聴け」のハートフィールドを思い出す。

 ハートフィールドは 村上の処女作「風の歌を聴け」の冒頭に引用される架空の作家である。本書を初めて読んだ1980年半ば段階では この作家の実在を信じて 探したものだ。インターネットの検索などが無い時代のことである。僕の徒労ぶりが分かっていただけると思う。しかし 結論としては村上の創作だったのだ。処女作で架空の作家を引用する村上の確信犯ぶりには 今なお脱帽だ。

 そんなわけで 若干「すれた」僕としては このうさぎ亭にも いささか眉につばをつけている。

 但し これは言いたいが うさぎ亭が実在するかどうかは 実は僕らにはどうでも良いのだ。あるだろうと思っている方が幸せであることも確かだ。そうして そんな幸せこそが うさぎ亭の 僕らにとっての「実在」なのだと思う。
作者の素顔が垣間見える ★★★☆☆
小説だけを読んでいると、そのイメージで作者をとらえてしまい
がちだ。だがエッセイを読むと、こんな一面もあったのかと驚か
されることが多々ある。ものの見方、考え方、そして趣味や嗜好
まで、幅広く書かれた内容は興味深い。なかには、作家としての
鋭い洞察力を感じるものもある。さまざまなことについて書かれて
いるが、その中で「おっ!」と思ったのは、「ウサギ亭」の
コロッケ定食。読んでいるうちにたまらなく食べたくなってしまった。
このお店、どこにあるのだろうか?気になる・・・。