チャップリンかく踊りき
★★★★☆
喜劇王チャップリンの1910年年代から60年代までの自伝で、
日本で有名になっている作品は、だいたいこの時期に制作されたものです。
「犬の生活」「のらくら」「キッド」「独裁者」「巴里の女性」
「モダンタイムス」「殺人狂時代」などなど。制作の裏話や
苦労話、日本で暗殺されかけたこと、などの派手な話もありますが、
どちらかというと交友録のほうに重点が置かれているようです。
数え切れないほどの映画人のほかに、チャーチルやガンディーとの
交流などについても述懐していますが、誰に対しても気取ったり
へりくだったりしない。こういう自然なつきあい方が、みんなに
親しまれるキャラクターになったんだろうな、と思います。
チャップリンといえば、”ひょうきんで人なつっこい人物”
”おっちょこちょいの道化”など、スクリーン上のイメージが
先行しがちですが、少なくとも自分を語るときの彼はとても
クールで、飾り気のない語り口で飄々と自分の成功と失敗を
語っています。20世紀の空気を感じたい人にお勧め。
"自由と希望の国" アメリカで大成功し、アメリカから追放されるまでの、後半生を克明に描く。
★★★★★
チャップリンが自由と希望の国アメリカで大成功を収めるところから、アメリカを追われる身になるまでの後半生が、この下巻で克明に描かれています。上巻よりも人名がふんだんに出てくるので、この時代(20世紀前半)の人物/文化の予備知識がないと、ちょっと辛いかもしれません。(こういう意味でも、氏の記憶力にはホントに脱帽します) そこは気にせず流し読みして、チャップリン氏の発言に注目して読み進めれば良いかと思います。例えば、映画のアイディアの思いつき方について説明するくだりを読むと、これは研究者が新しい着想を得るための日々の心構えと共通するんだなぁ、と感心しました。
この下巻を読み終えると、アメリカという国は今も昔も変わらないんだぁ、と思ったりしました。チャップリンをこよなく愛した筈のアメリカが、チャップリンを追放するに至るまでの経緯を読むと、このような話は現代でも大いにあり得る話だと思いますね。(911事件以降の状況は、チャップリンが経験した「赤狩り時代」と相通じるモノがあるように思えました)
本書を読み終えたら、またチャップリンの映画DVD集(「ラヴ・チャップリン ! コレクターズ・エディション BOX 1&2」)を見たくなりました。今度は、今までとはまた違った楽しみ方が出来そうです。「人生には三つのものがあればいい。希望と勇気とsome money」、このチャップリンの名言を今一度噛みしめたいですね。