タルコフスキー監督が、初めて祖国・ソ連(当時)を離れて撮った一作。モスクワの詩人・アンドレイが、通訳を伴ってイタリアのトスカーナ地方を訪れる。静かな村の湯治場に着いた彼は、そこで「狂人」扱いされているドメニコに興味を抱くが、ドメニコは彼に謎めいた言葉を返すのだった。
ソ連からイタリアに亡命したタルコフスキーが、アンドレイに自らの姿を投影しているのは明らか。アンドレイの「芸術を理解するためには国境をなくせばいい」という台詞に、監督のメッセージが色濃く表れている。湯治場の「水」や「蒸気」、焼身自殺するドメニコの「火」など、タルコフスキー作品に共通するイメージが、とくに象徴的に使われている作品でもあり、荘厳な映像美は、クライマックスの廃墟をはじめとしたイタリアの風景で、いっそう磨きがかかった感がある。(斉藤博昭)
こうへいのオススメ
★★★★★
冒頭の、絵の様に美しいトスカーナの風景は、もはや浄土だ。
その美しい風景の中を、魂の救済を求めて彷徨う瀕死の詩人・・・。
映像の美しさ、構図、シーンの間合い、そのどれもが素晴しい。
この「ノスタルジア」をはじめ、「惑星ソラリス」、「ストーカー」など、一連のアンドレイ・タルコフスキー作品を超える映画芸術はこの先出てこないだろう。そう思える程に全てが完璧。
執念の映像詩
★★★★☆
これは映画という表現手段を用いたポエジーだ。火や水、そして崩れ落ち、朽ち果てていくカタチが、異国の光を得て、漸く作家の無垢な「美」として映像へ結晶していく。かつてロシアだったソ連では決して描けなかった妄執を、悲痛にも異国に出現させつつ。
MARIE’S
★★★★★
非常に美しい映画です。郷愁という、言葉ではうまくは説明することができないが、確かにはっきりと感じる感情を、まるで詩のような、美しい映像で綴っています。イタリアはトスカーナ地方をロシアの詩人が訪れます。そこで逢う情景や事物が心を惹きます。たしかにそこには故郷があったのかもしれません。