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イサム・ノグチ(上)――宿命の越境者 (講談社文庫)

価格: ¥790
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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イサム・ノグチの名前は知らなくても、彼の「あかり」の連作なら誰もが見知っているだろう。シンプルな紙細工の照明器具は、デパートなどで販売されてきた「芸術作品」であり、サラリーマンでも容易に入手できることをイサムは誇りにしていたという。
本書は「ミケランジェロの再来」とも言われた彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)の生涯の最もプライベートな部分まで、FBI文書などの貴重な未発表資料を数多く用いて丹念に描き出す。その人生は物語の主人公のように波瀾万丈で、登場する人物も実に多彩である。22歳のイサムを「助手」として迎えた彫刻家ブランクーシ、イサムの「パトロン」としてさまざまな援助を惜しまなかった陶芸家北大路魯山人。山口淑子(李香蘭)との数年にわたる結婚生活をはじめ、その華麗な女性遍歴もつまびらかにされる。豊富な肖像写真によって、人々を引きつけてやまないイサムの魅力が生き生きと浮かび上がる。
日米の混血児として、日本のみならずアメリカでも第二次大戦前後に辛酸をなめたイサムの一生をたどる本書の焦点は、モダンであることを常に追求してきたイサムの作品の芸術的評価や分析以上に、どちらの国にも帰属し難かった彼の懊悩(おうのう)にあてられている。惜しまれるのは、もし本書が巻末に人名索引を備え、せめて数点でもイサムの代表的彫刻作品をカラーで紹介していたら、専門の研究者にとってもさらに有用なものとなっていただろうということである。(安田靜)
学術研究書とはひと味違う ★★★★☆
研究書ではあまり表に出てこないような、
恋の話が詳しく出てきておもしろい。
とても読みやすく、ノグチの人生を全体的に知るには良いと思う。
本当に世界のイサム・ノグチなのだけれど、読みにくいのが…… ★★★☆☆
思いがけず、牟礼のイサム・ノグチ庭園美術館に行くことになり、気になっていたこの本をあわてて読んだ。複雑な生い立ち、華麗な女性遍歴と国際的な人脈の数々、戦争時には日本とアメリカのはざまで苦悩する姿などが詳しく書かれている。とくに母親レオニーの奮闘ぶりは(映画になるらしいが)、もっと知られていい。また、晩年にイサムが牟礼である石工さんと出会い、心を通じ合わせていく様にはほっとさせられた。

さすがにノンフィクション大賞に輝く正統派の力作だと思うが、どのページも字で真っ黒。忠実に資料を引いているせいか、いろいろな記号や英語の直訳っぽい表現も多く、さらさら読めるとはいいがたい。たとえばこの本のダイジェスト版などがあれば、もっと多くの人にイサムの生き様を知ってもらえるのにと、文庫本カバーの、老いてもなお、若き日と同じく鋭い眼光を放つイサムの写真を見て、つくづくそう思った。
自分の居場所を生涯求めつづけた芸術家 ★★★★★
読み応えがあり、満足です。特に、野口勇氏に関った人々への著者のインタビューが興味深く、この本に命を与えていると思います。
彫刻家巨匠の波乱に富んだ生涯 ★★★★★
 米国在住のノンフィクション作家が、日系米国人の彫刻家イサム・ノグチの生涯を丹念に取材した初の本格的評伝。日本人の父野口米次郎、米国人の母レオニーの非嫡出子として1904年ロサンゼルスに生まれる。赤子の彼を日本に連れて渡る時から「幼い頃から美への目を養い、やがては自分の思いを表現できる何らかの技術をその手につけてやりたい」と誓った母親の願いがすべての始まりであった。13歳の時、母親に従ってアメリカに帰り、その後ニューヨークを中心として彫刻の制作に励む。
 1960年以降、建築家ゴードン・バンシャフトとの仕事が本格化、「大いなる始まり」の時代に入る。庭という小宇宙に活路を見出し、更に公共的仕事をする豊饒の季節を迎える。香川県牟礼に石の彫刻仕事場、よき石工との出会いがあった。
 1985年、ニューヨークのロング・アイランド・シティにイサム・ノグチ庭園美術館がオープン。設立の趣旨を「われわれが生きた時代と重要な関わりを持ちながら展開してきた、私の仕事の全体像を見ていただきたいためです」と述べている。(同名の庭園美術館は香川県牟礼にも設立されている)
 従来の彫刻家の枠をこえ、美術界でぶつかるあらゆる境界線を突破してユニークな意欲作を末永く後世に遺したイサム・ノグチ。一人の命が完全燃焼して、歴史の激流に翻弄されながらも美を追求した魂に感動せずにはいられない(雅)
久々のヒット ★★★★★
膨大な取材、事実検証がおこなわれた本書には嫌味がなく、イサムノグチの生き方を自分なりに味わうことができます。読みやすい本です。また、一度は聞いたことのある名前が彼の交友関係で次々につながるのには驚かされます。