絵画の本質を求めた男
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この本には、絵画や彫刻の評論が書いてある。とは言っても、その説明は奇をてらわず、簡潔になされている。ディドロ自身が美術家の卵たちに対して、辛辣な警句を吐いているところなどは思わず、苦笑いをしてしまった。その言葉があまりにも真実だったからである。人を見ずして、絵を描くな。そう、ディドロは言いたかったのであろう。美術の学校で行われるつまらない行事、要するに人の模写や他の絵の模写を彼はこっぴどく批判している。人体が皮膚に覆われ、その下に血液が流れている以上、絵もその肉付けをしなければならない。彼はそのようなことを述べている。この言葉に記されているとおり、彼は現実主義者なのである。町を歩く人々を仔細に観察すれば、絵の材料などいくらでもある、とも彼は述べている。そしてディドロ自身も百科全書制作時に町工場などの実際の現場を体験し、それを本にしている。その類まれなる批判精神は、もちろん絵画にも波及している。その手は追求を許さず、画家のあるべき姿を滔々と述べている。
この本は、画家の卵や美術評論家にはぜひ読んで欲しいものである。