天才集団がなぜ破綻まで追い込まれたのか、それを知りたかった!
★★★★★
1990年代に起こった本当のお話です。
債券の帝王と呼ばれたジョン・メリウェーザー氏が率いるヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメントの設立から破綻に至るまでの経緯が克明に描かれています。
トレードの主になるものは債券のアービトラージ取引なのですが、このファンドを一躍有名にしたのはノーベル賞を受賞した人たちが加わっていたためでもあります。
オプション取引の理論値を計算できるブラックショールズ方程式を編み出したマイロン・ショールズ氏と後にそれを証明して見せたロバート・マートン氏がLTCMに加わっていました。
この本をどうしても読んでみたかった理由は、金融工学の天才の集団が4年近く驚異的な利益を生み出したにも関わらず、最後は追いつめられて破綻した理由を知りたかったからです。
あまり詳しくお話しすると読む楽しさがなくなると思いますので感想だけを述べますと、最後まで自分の土俵で勝負しなかったことが最大の原因であり、尚且つ、ファンドとしての全体のマネーマネージメントができていなかったということが二番目の原因だと個人的には理解しました。
大なり小なり、これは全てのトレーダーに共通する点だと思います。
興味のある方は是非ご一読ください。
非常に刺激的なノンフィクション作品
★★★★★
■概略
「金融界のドリームチーム」と言われたヘッジファンド、LTCMの成り立ちと栄光、そして転落までの道のりを詳細に描いた作品。
■感想
こんなにも刺激的な本は久しぶりです。
「ウォール街の帝王」ことソロモン・ブラザーズの看板たるジョン・メリウェザーの金融工学を駆使した天才的な戦略、学会の公式を市場に持ち込んだノーベル賞受賞者達、そして彼らを囲むウォール街の面々。
ウォール街という強欲が渦巻く街を舞台に繰り広げられた天才たちの戦いを詳細に、かつ人間味溢れる文体で表しています。
非常に示唆に富み、教訓になる物語です。
■一般的見解
金融ジャーナリストである著者・ローウェンスタインの語り口に感銘を受けたという方が多かったようです。
確かに、LTCMのただでさえドラマチックな物語を、緻密な取材による臨場感溢れる展開と読者を飽きさせない語り口で描いた著者には脱帽です。
■総括
ヘッジファンドの物語なので当然、ある程度の金融の知識が必要です。
(とはいっても、無くても読めなくはないですが)
なので、ある程度金融に興味があり、かつ天才たちが犯した過ちの歴史を垣間見たいという方には是非読んでもらいたい一冊です。
金融の冒険物語
★★★★☆
当時誰もやらなかった金融手法に挑戦し、華々しく成功、
そして失敗へと至った軌跡。金儲けの秘術を求め、あるいは
金融工学への批判の為に本書を読む読者は多いようだが、
新しい構想に果敢に挑むベンチャー精神を読み取るべきと
思う。これもまた貴重な冒険物語である。
金融帝国衰亡史
★★★★☆
ノーベル経済学賞受賞者ショールズとマートンを擁した伝説のヘッジファンドLTCM(Long Term Capital Management)の栄枯盛衰を描いた一冊。取材やインタビューを重ね、臨場感ある筆致で秘密のヴェールに隠されていたLTCMの内部事情に分け入っている。アメリカの非常に良質なジャーナリズム精神と、ノンフィクションな題材を面白く物語るストーリーテラーぶりがほどよく融合しており、飽きさせない。
同じくLTCMを題材にした本には他にニコラス・ダンバー『LTCM伝説―怪物ヘッジファンドの栄光と挫折』もあるが、後者はLTCMというヘッジファンド誕生までの、金融の歴史にまで溯った前史が半分近くもあり、どちらかというと知的読み物といった体裁(たとえが正しいかどうか自信はないが、リサ・ランドール『ワープする宇宙』の金融工学版と言ってもいいかも知れない)。単純に面白いのは前者だと思うが、二冊合わせて読めば、興奮に満ちた金融工学的世界を実感するに足りるだろう。
金融工学の果て…
★★★★★
FRB元副議長デビッド・マリンズ、ノーベル経済学賞を受けた経済学者であるマイロン・ショールズとロバート・マートンを有し、最高の頭脳と完璧な戦略で快進撃を続けた史上最大のヘッジファンドLTCMの興亡が描かれています。
金融工学の知識がない私でも、楽しく読めました。
サブプライムローン問題にも通じる点があります。