ニューエイジ・カルチャーが確立しているアメリカでは、精神世界の研究や考察が進んでいる。怪しげなものから、宗教家や哲学者によるもの、心理学者や精神科医による臨床データを踏まえたものまで、玉石混合だ。著者のワイス博士は精神科医で、心理療法士として多くの患者と実践的に向き合っている。催眠療法によって過去生をさぐり、現在のトラウマの原因になったものを見つけて治療するという。著書の『前世療法』(原題『Many Lives, Many Masters』)、『前世療法2』(原題『Through Time into Healing』)、『魂の伴侶』(原題『Only Love Is Real』)などはいずれもベストセラーで、著名人のなかにも愛読者や患者は多い。ワイス博士への信望を公言している人のなかには、シルベスター・スタローン、グロリア・エステファンなどもいる。
本書では数多くの臨床例を挙げ、肉体ではなく、人の魂(スピリチュアリティー)が持つパワーについて語る。母の胎内にいたときのことを克明に話す女性、絶滅した古代アラム語を話す双子の2歳児の話など、一瞬荒唐無稽にも思えるような、実際にあったエピソードが書かれている。巻末に付記された「重要な宗教に共通する価値観」「瞑想の実習」がおもしろい。疲れた心を一休みさせたいときは、この巻末だけでも十分だ。(齋藤聡海)