あどけない目をしたヴォーカリスト/作詞家であり、ポスタル・サービスの片割れでもあるベン・ギバードは、やはりバンドの看板的存在だ。長距離恋愛の難しさをテーマにした楽曲の数々を歌い上げるベンの声は、いつもどおり奇妙で美しくて力強い。しかし、ギタリスト/プロデューサーのクリス・ウォラもさるもので、自分こそがバンドの秘密兵器であることをまたしても証明している。全編にわたって細やかな音を積み重ねていくクリスの手法は、本作を「ヘッドフォン用アルバム」と呼ぶべきものにしているのだ。
このシアトルの4人組は、知的で情感豊かなインディー系ギター・ポップを展開してきた数少ないバンドであり、ビル・トゥ・スピルが1990年代半ばのごく一時期にやったことの継承者と言える(ビル・トゥ・スピル自身は、その後、酔っ払いロックという分野に移っていった)。そんなデス・キャブ・フォー・キューティーが、ここに来て急速にリスナー層を広げようとしているようだ。本作を聴く限り、彼らには充分その資格がある。(Mike McGonigal, Amazon.com)