たとえば、1つのリンゴを切って2人に平等に分配するにはどうすればいいか…という例題では、解答とともに「いかに納得性をもたせるかという点に着目することが重要」と指摘。さらにテーマを取引先との関係に広げて、お互いに信頼関係や協力関係を深めた「Win-Win」の関係を築くことが大切だと説いている。例題は本格的な問題というよりは「問いかけ」がほとんどで、問題を解く楽しみはあまり得られないが、思考を深めるきっかけにはなるはずだ。
唱えられている戦略思考は、事実や情報の把握のしかた、優先順位の決定、差別化、予測といった実践的なものから、論理的思考、分析、改善といったツール的なものまでさまざまである。また、「マネジメントのPDCA」「ブレンストーミング」「サプライ・チェーン・マネジメント」「モレなくダブリなく」「SWOT分析」など、ビジネス書によく登場する用語も多数盛り込まれている。
経営、マーケティング、論理思考などの概念やツールが網羅された分、戦略思考というテーマがぼやけていたり、表面的な解説にとどまっていたりする面も感じられるが、さまざまなビジネスシーンで直面する基本的な思考課題を概観し、整理するには役立つ。(棚上 勉)