上品な演奏、力強いが決して大げさになることのないヴォーカルを追求するマクブライドの流儀は、本作『Martina』でも変わらない。「This One’s For The Girls」は、メアリー・チェイピン・カーペンターあたりが見落としているものをじっくりと掘り下げたトラック。反対に、「In My Daughter’s Eyes」や「So Magical」といったチューン(田舎の幸福な暮らしを描いたもの)は、マクブライドの考え抜かれたパフォーマンスのおかげで、「泣ける音楽」の枠を踏み外すことがなく、安心して聴いていられる。「When You Love Me」や「Learning To Fall」のようなポップ・チューンでも、ギター、フィドル、それに甘ったるいシンセサイザーにかぶさるスティール・ギターが強調され、カントリーとしての体裁はキープされている。
ポール・ウォーリーとマクブライド自身が全編にわたってプロデュースを担当した本作は、輝かしいがあざとくはないレコードをつくるにはどうすればよいかというナッシュヴィル流のレッスンと言えるだろう。もうひと言つけ加えるなら、「Somewhere Over The Rainbow」のライヴ演奏は、最小限の媚びと最大限のソウルに彩られたヴォーカルについてのレッスンというわけだ。(Michael Ross, Amazon.com)