本書は、中国映画の人気を高め、発展に尽くしてきた4人のスターをとりあげ、彼らの歩みや人間関係、作品背景を語る。日本でも『大地の子』に出演、父親役で知られ、アーサー・ミラーに「ヘンリー・フォンダを思わせる」と評された、朱旭(チュー・シュイ)の人間性。『紅いコーリャン』はじめ、一作一作で異なる表情を見せる姜文(チアン・ウェン)の、俳優としての映画哲学。中国を代表する監督であり、また『古井戸』で自然な演技を見せた張藝謀(チャン・イーモウ)の、波瀾(はらん)に満ちた映画監督への道のり。そして、演技派「貴公子」、張國榮(レスリー・チャン)の中国映画における魅力や、中国映画に主演した意味…。評論や字幕翻訳などを通じて、長く中国映画を見つめてきた著者は、本人や関係者のインタビューや逸話をまじえながら、作品ひとつひとつの見どころや時代背景を、愛情をもってわかりやすく解説する(本書は、『日中友好新聞』に連載された記事に、削除・加筆してまとめたものである)。
優れた明星4人の出演・監督映画は、見ごたえある作品ぞろいだ。中国映画や4人のファンはもちろん、これから観てみたいという人に、良質のガイドブックとしてもおすすめしたい。(佐々木順子)