でも、これだけ一癖も二癖もある魅力的な人たちを、まるで<伝記>のように模範的につまらなく書かれると、失望の方が多くなる。彼らへのインタビューよりも、著者の思い入れを中心に書かれている点も気にかかる。
日中友好協会の発行する『日中友好新聞』で連載された文章に加筆修正してまとめたというあとがき部分を読んで、さもありなんと納得した。ある程度、中国映画知識のある人にはおすすめできない。
于藍(ユイ・ラン)は私は全く知りませんでした。しかし彼女の誠実で努力家の女優生活を読んでいくうちに、この女優の生涯は中国映画史そのものなのだなあと思いました。そしてなんと彼女の息子は「清朝最後の宦官 李蓮英」を撮った、田壮壮監督ではないですか!びっくり!こんなつながりがあったのかと唖然としました。劉暁慶(リュウ・シャオチン)は最近出た「毛沢東になりたかった女」を読んでからの悪女的なイメージとは違う、愛人の姜文に尽くした健気な女性の一面が描かれていて、とても好感が持てました。鞏俐(コン・リー)、張曼玉 (マギー・チャン)は言うまでもない中国を代表するトップ女優ですから皆さん良くご存知でしょう。鞏俐(コン・リー)はチャン・イーモウ監督との出会いと離別、そしてこれからの彼女の展望が描かれていて興味深かったです。張曼玉 (マギー・チャン)の映画では「宋家の三姉妹」「花様年華」が好きでした。彼女が「HERO」に出演したことで、彼女はアクション・ヒロインのきびきびしたイメージから、さらに広く豊かな映画女優への道を歩みだした気がします。
「あとがきにかえて」にあるように、「中国映画の明星」の姉妹編のこの本。著者の石子順さんは本当に中国を、そして中国映画を愛して書かれているんだとひしひし感じました。俳優編とぜひ一緒に読んで下さいね。