Loose
価格: ¥925
ネリー・ファータド『Loose』にまつわる熱狂ぶりは、音がレコーディングされる前から始まっていた。ヒップホップの達人、伝説のティンバランド(ミッシー・エリオット、ジェイ・Z、ジャスティン・ティンバーレイク)が共同プロデューサーとして参加すると告知されたからだ。ファンの頭に浮かんだ質問はこれだった。ネリーはポップ・ミュージックだけではなく、ポルトガルのルーツからもインスピレーションを得るアーティスト。その彼女をヒップホップの中心人物がプロデュースするとどう影響するだろう? 一聴してわかるように『Loose』はその過程でさまざまなスタイルを取り入れているが、驚くべきことに、もっとも大きな影響は80年代のエレクトロニカとラテン系のポップだった。本作はこれまでのファータドのCDとは大幅に異なっている。その事実は1曲目、ニュウェイヴの影響がある「Afraid」から顕著だ。冒頭のトラックとして強い印象を残すこの曲はアップテンポなワン、ツー、スリーのパンチで始まり、伝播していくダンス・フロアのビートを刻んでいる。2曲目の「Maneater」も、極上のキャッチーさを証明しているが、韻とキーボードにやりすぎの感があり、まるでエレクトロクラッシュのアーティスト、ピーチズの木からもいだようなサウンドで、オリジナリティがない。完璧な夏のポップ・ソングが続き、大ヒットとなった「Promiscuous」はいきいきとしたデュエットで、ファータドとティンバランドのクレバーなインタープレイをフィーチャーしている。この点では、『Loose』はマイアミの影響を受けたR&B、ラテン・ポップ、レゲエトン(それぞれ「Showtime」、「Te Busque」、「No Hay Igual」)、そして前述の80年代のノリ(「Glow」、「Do It」)の間で振り子のように揺れている。ファンは「Say It Right」、「In God's Hands」のファータドのボーカルが最高だと感じることだろう。本作でもっとも叙情的な2曲だ。