べス・ギボンズの不健康な歌声には、トリップ・ホップのよどんだビートと手の込んだスタジオ・ワークが付きものだが、本作はそれらを用いることなく、もっぱらビタースウィートな美しいメロディーとアコースティックなアレンジによってねじれた物語をつむぎ出す。にもかかわらず、ポーティスヘッドの絶対的な冷ややかさはここでも健在だ。ギボンズの歌は、眠気を誘う素晴らしいララバイとなる一方で、ひとつひとつの音に恐ろしいまでの孤独を宿らせ、聴く者の心を捕らえるのだ。「Romance」と「Sand River」の2曲はラウンジっぽいゴージャスなチューンで、バート・バカラック風の楽観主義にあふれているが、ギボンズの手にかかると暗く悲しい秘密を抱えたダスティ・スプリングフィールドのような歌になる。彼女の胸を打つ声こそが『Out of Season』を真に魅力的なアルバムにしているのだ。(Dan Gennoe, Amazon.com)