今回のクリエイティヴ・ルネッサンスをしょって立つのは、見た目は華奢(きゃしゃ)なリンジー・バッキンガムだ。彼は名作『Tusk』以降のどのフリートウッド・マック作品にも増して深く、自発性をもって取り組んでいる。バッキンガムによるフォーク的な要素を隠し味にした構造や、冒険的な、ブライアン・ウィルソンばりの音のテクスチャーが、あらゆるところで耳にできる。ただし、目新しさがなく説教臭い「Miranda」、「Red Rover」、「Come」、それにペダンティックで仰々しい「Murrow Turning Over in His Grave」は例外だ。
クリスティン・マクビーの鋭いポップ・センスこそ不在だが、スティービー・ニックスは作詞の腕をさらに上げており、「Ilume」に見られる民間伝承風の神秘主義はまだしも予想がつくが、そこからさらに飛躍した「Silver Girl」、「Smile at You」、「Goodbye Baby」、そしてタイトル・トラックは、物悲しく、いまの時代を代表するような名曲に仕上がっている。バッキンガムとのデュエットが話題になっているが、これは個人的なあつれきが解消し、フリートウッド・マックがより自由な創造性を獲得したことを示すものではないだろうか。そして、足もとには大地があるように、バンド名の由来となったミック・フリートウッドとジョン・マクビーのリズム隊が健在なのは言うまでもない。
核となる1ダースほどのトラックにしぼれば、彼らが過去において放った一連のプラチナ・ディスクに匹敵する内容といえる。(Jerry McCulley, Amazon.com)