グリルパンや中華鍋、煮込み用鍋に、中華包丁、万能包丁、ペティナイフ、「セルクル」と呼ばれる金属製の型抜き、しぼり口、そして何よりも「愛の料理人」になくてはならないフードプロセッサーがキッチンで待機しているだろうか。あとシックな皿やテーブルクロス、ベーシックでシンプルなデザインのナイフとフォーク、料理の脇に飾る花は?それにローリエ、タイム、グローブ、粒マスタード、粗塩、ナンプラー、オイスターソース、ナツメグ、豆板醤といった調味料は…?。
「キッチングッズには10万円は投資して欲しい。それらは人生のあらゆることを君に教えてくれる」とシェフ・ジュリアンは断言する。だが、何も慌てることはない。挑戦するメニューに合わせて少しずつ買いそろえていけばいいのだ。包丁だって、フライパンだってひとつあればなんとかなる。フードプロセッサーもすり鉢とすりこぎで代用できる。要は、自分自身と彼女の大切な時間のために、いかに五感を解き放ち、食材を選び、調理し、盛りつけ、食卓を彩るか、なのだ。
料理が苦手なら、この小じゃれた写真集のような本を片手に、彼女のアシスタントからスタートしてもかまわないと思う。
「料理はもっとも身近なインスタント・アート。“男子厨房に入らず”は余りにもったいない。調理の仕方や食卓の演出のディテールにこだわっていれば、自らの感受性も次第に磨かれていくのです」。著者の真の願いはそこにある。(中山来太郎)