Get Lifted
価格: ¥933
カニエ・ウェストが書くアップテンポのクラシックなソウルの曲を考えたら、このプロデューサー/ラッパーが伝統志向のR&Bシンガーを最初のレーベル・プロジェクトに選ぶのも驚きではない。レジェンドはフィラデルフィアのごった返した70年代にこだわったネオ・ソウルのシーンにまず登場し、ニューヨークへ向かって、スタジオでカニエ・ウェストの右腕となった。ウェストのポップな粋がレジェンドにも効果的に反映されている。多くのコンテンポラリーR&Bのレコードがシンガーの声とレベルが低い曲でも歌いこなす能力にかかっているが、レジェンドとウェストはきびきびとした「Number One」のように本物の曲を作っている。こちらは恋に夢中になったウェストが“俺の心は下半身とは関係なく動く”とはもはや信じていないとつぶやいている。次の曲、スヌープ・ドッグの愛の誓い以上に本気のようだ。そしてたとえメロディーが貧弱でも、ウェストは腹に響くようなベース・ラインを仕込んでいるために、ヒップホップの感覚で本アルバムはあまりにもレトロな郷愁へと流されていかずに済んでいる。
そうは言っても、レジェンドはプロデューサーの言うなりに歌っているだけではない。彼の声はすぐさま聞き分けられるわけではないし、アンソニー・ハミルトンのような苦悩も、ディアンジェロのようななめらかさもない。だが、抑制を効かせることへの天賦の才能は別格だ。ドラッグの暗喩としてのセックスを示したアルバム・タイトル曲は新鮮とは言い難いが、レジェンドは聞きやすくスムーズに歌えてはいるので、取り立てて問題はない。寝室へ誘うような曲調は使い古されている。このように遅れてやってきた感のあるアルバム、あとはこちらがどのような場面で聞くかにかかっている。(Keith Harris, Amazon.com)