書き出しからドラマティック、全編にわたりグラフィカル、解り易い文章で読むにも観るにも楽しい本でした。
本書の副題にもあるように内容によっては決してゴヤの作品のみに固執することなく関連ある美しい画が要所に配置され、ゴヤとゴヤを取り巻く時代の雰囲気がヴイジュアルに伝わります。
巻末にボードレール、マルローの評論文が引用してあり嬉しい。これは、さらに深く知りたい方の参考になるのでは。他にもゴヤ本人の私信、年表、当時のスペイン王室の家系図まで(!)最後まで楽しくおいしい一冊でした。
また文章自体は淡々としているのですが、読み進むにつれ著者のゴヤに対する深い理解と温かい眼差しがしみじみと感じられ、伝えられるゴヤ自身の人間像とも相まってじんわりと心に響くものがあります。
ゴヤの有名な作品には恐ろしく、グロテスクな印象のものが幾つかあり(やや主観的な表現で恐縮なのですが・・・)この本には、それらの作品群がなぜ産み出されたのか、分かり易く書かれていると思います。
ゴヤってどんな画家だったのか初めて知りたい方にも、入り易い内容だと思います。
読めば一編の絵画集から世界が広がるかも・・・。まさに再発見。
大きさも手頃で軽く持ち歩き易いです。