よくわかる空
★★★★☆
他のレヴュアーが書かれているような「クドイ」という印象はありませんでした。
親切丁寧に語られていて、
わかりたかったことがわかり、繰り返しにより感覚に残ったという感じです。
この手の他の本は読んでも頭を素通りしてしまうことが多かったのですが、
空の世界観とそのリアリズムが日常的に感じられるようになる一書です。
西洋の心理学に関しても本当によくかみくだかれていて、
仏教の深層心理学がいかにこれらの構造をも包み込めるものかが見えてきます。
(フロイト、アドラーからユング、ケン・ウィルバーまで。)
ただし、単なる文献研究なので独創性や科学性はなく、
日本人内部にしかウケそうにないかなぁ、という内容ではあります。
また、ここは間違っちゃいけないだろうという箇所として、
日蓮の法華経が庶民向けに簡略化されたもので、
仏教的エリートには向かないもののように書かれていた箇所があげられます。
日蓮ほど唯識論も中観論派も正しく援用されて、
幅広い弟子に仏教の真髄を語り、
なおかつ、民衆救済に激闘された仏教論師を私は他に知りません。
そもそも庶民を主役としなければ、
持続可能な変容・変革の社会システムなんて、創出不可能ですし。
唯識の立場から近代合理主義を批判する
★★★★★
下のレビュアーの方のおっしゃる通り、説明がくどいきらいがあるので「唯識思想」そのものを知りたい方は同じNHKライブラリーから出ている『やさしい唯識』を紐解かれる方がよいかもしれない。だからと言って本書が読むに値しないことを述べている訳ではない。ちゃんと唯識の説明はされているし、問題意識は、むしろ本書のほうが強いように個人的に感じる。西欧思想と仏教の世界認識は根本的に異なる。高度な科学を発達させたヨーロッパの合理主義は近代知とも呼ばれるが、ショーペンハウアー、ニーチェ、マックス・ウェーバーらによって批判された対象でもある。近代知は、世界をバラバラに分析的に認識するもので、仏教的に言えば「分別知」となる。仏教は事象の本質を「空」すなわち実体のないものとし、すべては「縁起」によって生じ、その意味であらゆるものは本来的に「一如」すなわち一つであるとする。本書の著者は合理主義の「分別知」がテロと戦争の世紀、環境破壊、しいては精神の荒廃を招き、近代的理性による解決は不可能だとし、唯識による閉塞の打破を企図している。唯識を仏教の「深層心理学」とみなす著者は、フロイト、ユング、アドラー心理学と唯識理論の相違、トランスパーソナル心理学との親和性を指摘し、東西思想の「習合」の可能性を探っている。
むしろ大乗仏教
★★★☆☆
唯識の説明ではなく、大乗仏教の解説に終始している感があります。また、NHKで放送されたものをあまり手直しせずに収録したようで、同じことを何度も何度も言っていてクドイです。
ただし、大乗仏教の思想をたいへんわかりやすく説明していて、新しい価値観を貰いました。なので星みっつ。