つよくやさしく
★★★★★
すてきな本に出会いました。
看護学生だった頃、日々の実習の記録をみてくれていた先生に言われた。
あなたはもっと、うれしかったとか悲しかったとか書きなさい。
正しいか間違っているか、から、心地よいか苦しいか、という世界にもぐっていっていたあの頃。
あの看護学生だった日々にこの本に出会えていたなら、と思う。
でも同時に、あの頃にこれを読んでいたら、私はおかしな方向へ行っていたのじゃないかと思う。
やさしさにいたる知としての技術。
技術をあいまいにするやさしさであってはならない。
技術の習得の前に立ちすくんだときより、やさしさということについて考えあぐねたときに読む本なのだと思う。
病気がそうさせているのだと思えばこそしかたないと思えるけれども、そうでなければ理不尽にちがいないひとときを利用者さんとすごした日の夜にも、この本を開いた。
「でも、ほんとうのやさしさというのは、物語も読めない、どうしていいかわからないというときに、それでも何かができる、やさしくできるということなのです。」
別にやさしくなんかなりたいと思ってない、と咄嗟に考えた。
それでも本の続きが気になって、それが技術もそこそこに身につけた今の自分の逃げだということにきづいた。
つよくやさしく、やさしくつよく
という恩師の言葉がよみがえった。
医療には限界があるけれど看護は無限だ、と実習記録をみてくれていた先生は半ば自嘲ぎみに言っていた。
それでもなんとなくそうなのかもしれない、と今でも思う私の気持ちを支えてくれる本のような気がする。