アンドレ・プレヴィンはいくつもの顔をもっている。『恋の手ほどき』（58年）、『ポーギーとベス』（59年）、『あなただけ今晩は』（63年）、『マイ・フェア・レディ』（64年）と、4回もアカデミー賞を受賞している映画音楽家としての顔。1960年代以降はむしろ、クラシックの指揮者としてのほうが有名かもしれない。そしてジャズ・ピアニストとしての活動も目ざましい。
   ジャズ・ピアニストとしては、1950年代半ばから1960年代初頭にかけてのコンテンポラリー・レーベル時代がもっとも精力的だった。1956年にシェリー・マンのベストセラー・アルバム『マイ・フェア・レディ』に参加したあと、1957年から同レーベルにリーダー作を次々と録音した。それらのなかでもっとも評判の高いのが1958年に録音した本作。レッド・ミッチェルとフランク・キャップを伴ったレギュラートリオによる演奏は小気味がよく、知的でスマート。自作2曲のほかは、おなじみのスタンダードを演奏しており、ウエストコーストならではのしゃれた感覚を発揮している。（市川正二）