フロントマンのスティーヴン・ジェンキンズがここでやっていることは、まさに血まみれの芸術といっていい。血管を切り開き、この数年に経験した苦悩を音楽の中にしたたらせているのだ。全14曲のうち12曲で、ジェンキンズは南アフリカ出身の女優シャーリズ・セロンとの悲惨な破局を語る。物語は、彼女の思い出を軽妙な言葉遊びでつづるところから始まり、恋人同士としての濃密な関係を経て、雑誌売り場の前を通りかかるたびに彼女のカバーガールみたいな顔の記憶に取りつかれる苦しみへと急展開する。ジェンキンズは、オートバイ事故の体験を歌った「My Hit and Run」で、舗道に叩きつけられる前にも彼女の顔を思い出す。
傷ついている時にこそソングライターとしての真価を発揮するのがジェンキンズのすごさである。ここでの彼は、前2作ではあまり見せなかった純真さを発揮している。(Jaan Uhelszki, Amazon.com)