読みやすくためになる
★★★★☆
2000年に出版された単行本の文庫化。
おまかに言って三つのパートからできています。一つ目は千住真理子の音楽人生。先生の厳しい指導、初めてのコンクールから再起まで。二つ目は音楽のこと。特にバッハ・イザイ・クライスラー。三つ目が普通の「演奏家生活エッセイ」。
中でも循環する主題が、バッハの無伴奏を弾くことがどれほど怖いか、一方、一丁のヴァイオリンがどれほど人の心を救うか。小さいうちからプロとして活躍していて、一度は楽器を捨てる程の浮き沈みも経験した人らしい、短いけれど厚みのある文章です。
ひとつひとつのエッセイに感動がある
★★★★★
出版社がふれ込んだ「おしゃれなエッセイ集」などというのはとんでもない。ものすごい本です。物凄い人です、千住真理子さんという方は。常に「最高」を目指して自分を追い込んでいくさまは、まさに孤高のヴァイオリニストというにふさわしい。
「神は、そのことに耐えられる人にだけ、大きな試練と栄光を与える」という言葉が、心の指針とする好きな言葉だそうですが、これほど千住真理子を表す言葉はないのではないでしょうか。
「ホスピス」や、「身体障害者」、そして普段のコンサートでもさまざまな邂逅があります。千住さんの曲を聴いて、自殺を思いとどまった女性、そしてその責任の重さにぶるぶる震えた千住氏。ひとつひとつのエピソードに感動があります。
蛇足ながら、千住さんの文章は非常に上手です。きちんとオチがついていて、その瞬間、そのエッセイのテーマがひとつに凝縮されます。
最後に千住氏の決意の言葉、「たとえ苦しみばかりでも、そこに少しの希望も見えなくても、戦おう。生きるために、〜その命、尽きるまで」これだけでも、並大抵の人でないことが分かると思います。
千住真理子さんの人柄
★★★★☆
彼女が2歳半でヴァイオリンに出会い、以降の演奏家活動をエッセイに綴っている。
本格的にヴァイオリンに取り掛かったのは、慶応幼稚舎の頃から。子供が得意なことを見つけ、XX君は○○博士だとか名付ける先生に、「ヴァイオリンの真理ちゃん」と呼ばれ、皆に励まされたことがコンクールに挑戦することに繋がった。
幼稚舎での校風「自立自尊」、「知徳の模範」、「気品の泉源」が、彼女のその後を常に導いたとの事。一方で、「神は、そのことに耐えられる人にだけ大きな試練と栄光を与える」を、自らの信条とされている。
20歳の頃には、ヴァイオリニストになることを放棄され、立ち直りに随分と努力をされたことが、今の彼女を作り上げた礎となっているようだ。
父親から言われた、「傷つけられず磨かれないダイヤモンドはただの石だ」を、心に焼き付け、日々切磋琢磨の努力をされている様子。
全編を通し、自分を見つめどう生きるべきか、ヴァイオリニストとして何をなすべきか、を真剣に問いかけ行動されているのが、一般人にも参考になり、励ましを与えてくれる。
人間としての千住さんに触れられた本。
魂が宿る音楽には力がある
★★★★★
千住真理子さんのヴァイオリンには聞く人を癒す力があります。
少なくとも7月に初めてその演奏を聞いた私はそう感じました。
そしてその理由がこの本を読んで分かった気がします。
家族の不幸など、生きる上で何か悩みを抱える人や
音楽に本格的に取り組んでいるもしくは取り組んでいた人で
何の為に音楽が存在するのかその答えが分からずにいる人には
特にお勧めできます。
この本は千住さんがストラディバリウス「デュランティ」と
出会う前に書かれたものですが、千住さんがデュランティと
出会うべき人物だということにきっと誰もが納得されることでしょう。
そしてまだ千住さんのコンサートに行かれたことがない方は
この機会にぜひ生の演奏を聞いて頂きたいと思います。
悲しみ、苦しみを乗り越えて。
★★★★★
人からの評価が重荷になり、
一時はヴァイオリンを置いた千住真理子。
自信を失い、落ち込み、不安に駆られるすべての人に
読んでもらえたら。。。と思う本です。
等身大の彼女の姿勢が書かれています。
その真摯な姿勢は慰めになり、自分も頑張ろうって思えます。
是非一読されることをお勧めします。