本作はわびしげで芸術的な意欲に満ちているが、町はずれのどこか(「Political Scientist」)を訪ねたり、厳しい自省の念(タイトル曲で「ああ、俺は今まで何を飲んでいたんだ?」と問いかけている)にかられたりもする不思議に感動的な作品だ。情感にあふれた雰囲気は、たとえ傷ついた心であっても、まだときめきを感じる(「This House Is Not for Sale」)ことをところどころで明かしている。とは言え、ときおりそれが過多と感じられるところもある。散文的な「My Blue Manhattan」や漠然とした「Avalanche」がそうだ。
「Afraid Not Scared」(レディオヘッドの「Subterranean Homesick Alien」を思わせる曲だ)を除いて、アルバム全体を通して響いているのは、人生に対する穏やかな絶望を奏でる物静かなテーマ曲のような、深夜に地下鉄のプラットフォームで感傷的なヴァイオリン奏者がたったひとりで奏でるような音。そうした曲の数々とスモーキーなすばらしいカバー曲「Wonderwall」によって、本作はほぼ完璧にアダムスのアルバムに仕上がっている。(Ben Johncock, Amazon.co.uk)