インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

バースデイ・ストーリーズ (村上春樹翻訳ライブラリー)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
Amazon.co.jpで確認
 「誕生日」をモチーフにした英米文学の短編小説を、村上春樹が選出し、翻訳、編集したアンソロジー。レイモンド・カーヴァーやポール・セローといった、村上ファンには馴染みの深い作家から、イーサン・ケイニンやデイヴィッド・フォスター・ウォレスなどの新進気鋭の作家作品まで、「この十年くらいのあいだに発表された、活きのいい」(「訳者あとがき」より)佳品10編が並んでいる。さらに、村上自身による書き下ろし短編「バースデイ・ガール」も収録。村上作品や現代英米文学の入門書としても最適な1冊となっている。

   かつて役者を志し、現在は暖房設備の部品を販売している「私」は、雪の降るある夜、いきつけのレストランで、家族とともに食事を楽しむ1人の老婦人を目にする。店主によると、今日は彼女の80歳の誕生日だという。レストランを出ようと彼女の側を通り過ぎたとき、ふいに彼女は私の袖口をつかみ、私の名前を口にする…。(ラッセル・バンクス「ムーア人」)

   誕生日に友人を撃ち殺してしまう青年(デニス・ジョンソン「ダンダン」)、夫へのプレゼントに、高級娼婦を手配する妻(アンドレア・リー「バースデイ・プレゼント」)、20歳の誕生日に不思議な老人と出会う女の子(村上春樹「バースデイ・ガール」)。さまざまな人々の、さまざまな誕生日の1日を切り取った11編の物語は、読み手自身の、かけがえのない誕生日の思い出をよみがえらせてくれる。もちろん、短編小説のおもしろさと奥深さをも、存分に味わうことのできる本書は、読者に向けて編まれた、村上春樹からのとっておきのプレゼントである。(中島正敏)

ステレオタイプにトガッた短編集 ★★★★☆
現代英語文学の翻訳が12編に、訳者の村上春樹の自作がついた、誕生日にまつわる小説アンソロジー。私の興味からは遠いジャンルだから、村上訳でなかったら、決して手に取ることはなかっただろう。

各々作風はまったく異なるが、通底する特徴があると途中で気づいた。モラルの解体である。まっとうに生きている市井の人が持つ良識を尊重せず、規範とか道徳とか呼ばれる不文律をいったん白紙に戻した上で作品を組み立てていることが、どうやら現代文学のひとつの特徴であるようだ。

そうした態度が目新しいうちは刺激にもなったろう。しかし、ここまで普遍化してしまうと、私にはかえって陳腐に見える。「より強い刺激・インパクト」の追求はどこかで破綻する。本書は短編の秀作選のはずであるが、いずれも何らかの印象は残したものの、私にとって「文字が立ってくる」(開高健)ほどの作品はなかった。比較的温和な作品がより好ましく感じられたことは言うまでもない。中でも、訳者本人の書き下ろしがもっとも心に寄り添う作品であったのは、私が村上ワールドにもともと深い親近感をもつためであろうが、あるいは訳者が駆使する日本語が、翻訳と自作とで異なるせいかもしれない。

専門家として興味深かった作品はイーサン・ケイニン「慈愛の天使、怒りの天使」である。この作品の主人公にはパーキンソニズムがあり、また認知症であって、くすりを飲んでいる。作品中の言動から考えて、これはレヴィー小体型認知症であると考える。もしも「鳥」が幻覚であるなら、これは同病の見事な描写ということになるのだが、さすがにそこまでは言えないか。
テーマは同じでもフレーバーの異なる印象的な短編を収録 ★★★★★
タイトルに惹かれたので自分の奥さんの誕生日にプレゼントしようと思って買いました。しかし、息子が誕生日に交通事故で入院したり、殺人を犯したり、誕生日プレゼントとして若くて魅力的な異性を配偶者に「贈る」ような話が出てくるので、プレゼントにするかどうか迷ってしまいました。訳者もあとがきで述べているように、この本には典型的なバースデイ・ストーリー(登場人物すべてがハッピーで終わる心暖まる話)はひとつも収められていません。ただし、テーマは同じでも、個々の短編のフレーバーはかなり違うので、心に残る話も3つか4つありました。特に、イーサン・ケイニンの「慈悲の天使、怒りの天使」とダニエル・ライオンズの「バースデイ・ケーキ」、レイモンド・カーヴァーの「風呂」は印象的!。レイモンド・カーヴァーの「風呂」は有名な「ささやかだけれど役に立つこと」のショートバージョンだそうです。両者を読み比べるのも面白い体験だった。ちなみに「ささやかだけれど役に立つこと」は「レイモンド・カーヴァー傑作選」(中論公論社、同じく村上春樹編・訳)に掲載されています。
お気に入りが見つかれば☆ ★★★★☆
タイトルからは誕生日の心温まる作品集のように想像すると思うのですが、あくまで誕生日にまつわる、それでいて暗い話のほうが多いです。とはいっても決して一辺倒ではなく、それぞれにそれぞれの感想を与えてくれるような、ある意味ではバラエティにとんだ内容になっています。
また作品(作家)毎に春樹氏による解説もあるのが嬉しいところではないでしょうか。
個人的にはラッセル・バンクス「ムーア人」がとても気に入りました。切なさと温かさが一緒になった本当に感動するいい話で、思わずその余韻に浸ってしまいました。
秀作ぞろいだけど、好き嫌いは分かれる ★★★★☆
村上春樹が誕生日にまつわる短篇を集めて翻訳した短篇集です。レイモンドカーヴァー以外の作家はほとんど知らない作家ばかりだったので、興味深く読む事ができました。どの話もよく出来ているとは思いますが、全体的に春樹色が強い、喪失感漂う少し暗めの雰囲気の話が多い、まさに訳者の好みが出てる短篇集なので、好き嫌いはあるでしょう。
でも、日本ではあまり知られていない作家の、誕生日をモチーフにした話を12篇(それも作家の解説も加えて)と訳者本人の書き下ろしも1篇入っているので、私にとってはなかなか充実した内容でした。
いろんな誕生日を感じる ★★★★☆
手に取りやすい新書サイズ、単行本と較べれば廉価、和田誠撮影の写真を用いた洒落た装丁というセールスポイントを背負って登場した「村上春樹 翻訳ライブラリー」(中央公論新社)の第一弾。「誕生日」をモチーフにした短篇集が13篇収録されている。そのうち2作が単行本未掲載(本書のウリ)。1作は訳者・村上自身の書き下ろし。あとがきによると、ここ10年(20年?)で発表されたものをチョイスしているそうなので、現代英米純文学のカタログにもなるだろう。どちらかというと重たい小説が多いので、イーサン・ケイニンによる、おばあさんの話がとても微笑ましく感じられた。彼の短篇集が文春文庫から出ているので今度読んでみようと思う(「宮殿泥棒」)。