よい入門書だと思います
★★★☆☆
飯田泰之の本は読みやすい。1975年生まれで年齢もあんまり変わらないが、よく整理された文章を書くのでいつも感心する。
最近『リスク』(バーンスタイン)という本を読んで統計の世界のおもしろさにふれ、これを読んでみた。
今まで「統計的に有意」の意味がよく分からなかったが、これを読んでよく分かった。中心極限定理、というのがあって、「「母集団がいかなる分布をしているとしても、サンプルの平均値は母平均を中心とした正規分布に従う」そうだ。「母集団がいかなる分布をしているとしても」というのがポイントで、このために様々な世論調査(いろいろな分布が想定される対象を調査する)などが誤差数パーセントの範囲で「有意」だと結論付けることができるそうだ。昔何かの教科書で読んだ気もするが、そのときは意味がよく分からなかったみたい。。昔、会社で全員のアンケートを取る、みたいな仕事をしたけど、そういう仕事する前に読んでおきたかったよ。この本が出たのが2007年12月だから遅かった。
貸してくれたのはAG君。ありがとう。
統計学的な思考を磨くにも、統計学を知るにも中途半端
★★☆☆☆
新進気鋭の経済学者による統計学入門書。文章のはしばしに明晰さが顔を出し、優秀な著者であろうことはわかるが、1冊の本としては中途半端な出来である。
本書は統計的思考(概論)、平均、検定、回帰分析について扱っているが、それぞれについてさらっと解説を書いており、お互いの連関があまり感じられない。とくに、1章の統計的思考がほかと全く別物であることは瑕疵として小さくないのではないだろうか。
また、1度出た用語・項目については知っていることを前提としているため、統計学に不慣れな人(つまり本書の読者の大部分)はその箇所に戻って確認しなければならないが、クロスレファレンスも索引もついてはない。これから統計学を学ぼうと考えている人への配慮があまり感じられない。厳しいかもしれないが、本の作り手としては良心的とは言えないだろう(著者・編集者とも)。
著者は「文系の文系による文系のための統計入門」を書こうとしたとあとがきに書いているが、本当にそうなら成功したとは言いがたい。大学から数学を離れ、そのまま働いている人が本書を読んでも、専門用語に配慮されず、説明を端折っているところが多く、本当にこれで理解できる人がいるのだろうかと疑問を持った。全体的に、自分が他書で理解したことを自分の言葉で言い直したような印象で、「こう説明すればわかってもらえる!」という自分の頭で考えた説明があまりないような気がする。
また、著者は実地のビジネスのことはさほど詳しくないようで、副題で「生活・ビジネス・投資に生かす」としているわりに、ビジネスパーソンが統計を生かせそうな例は皆無である。たんに統計学をなぞっているだけの印象しかない。ビジネスパーソンに買わせたいなら、彼らがどんなことで本当に統計学の知識をほしがっているのか調べるなり、考えるなりすべきであったと思う。
ただし、良心的だと思ったのは、あとがきで自分が参考にした本、読者に役立ちそうな本をきちんと紹介して点である。その誠実さは評価できる。ここでは酷評したが、才能溢れる著者のようなので、執筆にあたってはぜひもっと研究して、良書を出していただきたい。今後のご活躍を期待する。
統計学について知りたい人は、たとえば、早稲田大学の向後千春先生がウェブで公開なさっている「ハンバーガー統計学」を読むのもいいのではないか。エクセルを使う人には本当に役に立つ親切な講座となっているし、まだ使いこなせていない人にも配慮している。無料公開している点もありがたい。
きっかけにいいかも
★★★★☆
正直なところ、私にはまだまだ難しかったです。
しかし、参考文献も豊富に紹介されており、がんばって統計学と向き合って取り組んでいけば、「使える」になるのではないかという方向性を示してくれる本でした。
「統計は、データの中から『ふつう』と『ふつうじゃない』を区別し、発見するツールとして有効に機能します。」ということが著者の一番言いたかったことかと思います。
統計的思考が身につくかも
★★★★☆
論理的な思考、意思決定に果たす統計の役割を平易に解説した本です。著者は限られたデータだけでも重要な結論を導出できる、統計的な思考を使うと意思決定の改善をはかることができることを言いたいのです。帰納法と演繹法といった初歩的な論理学の方法を援用しながら統計的方法のメリットについて、「統計学はああるときは私たちの主観的な思い込みを抑制する解毒剤として、またあるときはリスクと成果のバランスを明確にすることを通じて合理的な意思決定を導く基礎資料として、とても役立つ思考支援ツールなのです」(p.37)と要約しています。
記述統計を解説する章では、「統計学=情報集約ツール」という観点から平均、偏差、寄与度、指数といった用語を扱い、統計的分析、予測を解説する章では、限られたデータにもとづく予測と行動のノウハウという観点から、回帰分析、時系列解析(自己回帰モデル、移動平均モデル、ARMAモデル)を取り上げています。前者でもそうですが、後者ではマンション利回り、勉強時間と得点との関係、ダイエットサプリメントと肥満度との関係、居酒屋の来店者数などの身近な具体的例での説明に工夫が見られます。中心極限定理、統計的検定、決定係数、t値、外値の処理の仕方なども類書にない分かりやすさで記述されています。以上のような要約でもなお「難しそう」と思うかも知れませんが、実に分かりやすく書かれていて、その点は保証できます。一読あれ。