クリストファー・フランケ、エドガー・フローゼ、ピーター・バウマンが1974年にリリースしたこの傑作は、エレトロニック・サウンドとシンセサイザーが生みだす漆黒の音風景によって、満ち引きを繰り返している。本作は、多くのアンビエント・ミュージック、それにいくつかのダンス・ミュージックの先駆けとなり、スティーヴ・ローチといったアーティストに影響をあたえた。その理由は、本作を聴けばすぐにわかる。美しく濃厚なシンセによるタンジェリン・ドリームならではの音の波が、アンビエント・ミュージックの宝石に偶然出くわして、オーケストラ風の夢のような情景を引きだし、開放的なサウンドによる分厚い流れに向かってにじみだす。
今や古典となったタイトル曲は、心をなごませると同時に、かすかな連続音とゆがんだ金属音で亡霊のように心をぞくぞくさせては、悪夢のようなさえずりと叫びを放つ泥沼に飛びこんでいる。「Mysterious Semblance」は、まるでエレクトロニクスでできた愛らしい鷲のように、舞い上がっては舞い降り、幻覚状態の輝きと無限の威厳を本作にもたらしている。
本作と次作『Rubycon』は、タンジェリン・ドリームという名のパイのなかでも最も味わい深い部分と言える。(Karen Karleski, Amazon.com)