聖ドン・キホーテ
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1930年に宣教のために来日し、戦後の混乱期をひたすら戦災孤児救済のために尽くしたゼノ修道士の激動の生涯を綴るノンフィクション。
良くも悪くもイキアタリバッタリで破天荒な救済活動はたびたび世間と衝突し、「売名家」「場あたり」「自己満足」と罵られる事も多々あったようだ。
だがゼノさんの行動の底にあったものは、ただひたすら「目の前で苦しんでる隣人を見捨てておけない」というシンプルな人間愛だったのだと思う。
誰もが自分が食べる事しか頭になかった時代に、命がけで赤の他人が食べるパンを調達し、がむしゃらに与え続ける事がどれほど大変な偉業か。
私はクリスチャンではないが、ゼノさんの愛すべきキャラクターとどんな過酷な運命にも負けない不屈の精神には感動せずにはいられない。
やがて物質的に豊かな時代が来るにつれゼノさんは日本人に忘れられていったという。悲しい事だが、本物の愛とはそういうものだとも思う。
こんな時代だからこそ、愛に殉じたゼノさんを知ってほしい。
誰もがみな、いつかどこかでゼノさんに一個のパン、一枚の毛布を貰って今日を生きのびてる命なのかもしれないのだ。