仕事に追われる彼女は、出席日数が足りず高校を中退。その後、大検に2度失敗しつつも、早稲田大学の検定試験にトライし受験資格を取得。1965年に本試験にもパスして第二文学部に入学した。車の中で化粧を落とし、校門前の立ち食いソバ屋で空腹を満たして授業を受ける。そんな毎日の中で、スターと学生の両立を図ったのだった。その後、結婚を経て大人の女優へ…。
この本には、出演した映画について、監督や共演者との思い出が一つ一つアルバムのページをめくるように語られている。これまで100本の映画に出演してきた彼女は、そのキャリアを自らの名前にひっかけて「小さな百の出合い」と呼ぶ。100本の映画の中で、100の人格を演じてきた吉永小百合は、青春スターから大人の恋が演じられる女優に成長した。一方、かつて黄金時代を謳歌した映画界はいつしか斜陽となり、経営難から閉館を余儀なくされた映画館(コヤ)も多い。「けれども、映画が好き」と語る彼女は、最後に以下のような決意で、この本を締めくくっている。「もっともっと映画を愛する仲間達と出逢うためにも、この世界で生き続けようと思っています」
サユリストならずとも、「女優の視点から語られた日本映画史」として、興味深く読むことのできる1冊だ。(太田利之)