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玉蘭 (文春文庫)

価格: ¥1
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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どこに行っても“自分”はついてくる ★★★★★
自分を変えたくて、すべてを捨て去って逃げても、絶対についてくるもの、それは自分。
自分を一度壊して、ボロボロになってからもう一度自分を作るしかない。
主人公の有子のように追い詰められた経験は、女性なら誰でもあるはずだ。

自分自身が不等号で計られるのは耐えられないが、自分自身だって他人をそういう見方をしていないとも限らない。だから他人を不等号で見る側に自分が回る…そういう発想は世の中にあふれているけど、それを続けたらスーパーフリーみたいになってしまうんじゃないの?と思った。
どこまで逃げてもついてくる過去の自分=忘れられない出来事、という描写が、PTSDに通ずるような気もした。

一度死を決意したものの、その後も生き続ける質に静かに心を動かされた。
有子にもいつかは、質のような静かな強さが宿ってほしい。
ボロボロになったことのあるすべての人に読んでほしいです。
玉蘭は白木蓮。会いたくて会いたくて〜 ★★★☆☆
最初のページを読み始めたとたんに物語に引き込まれていました。
上海のシーンなんてホントに自分がそこにいて呼吸してる気分になるぐらい。
男性と女性の恋愛に対する考え方の違いの描き方がいいですね。
現代の有子と松村、1920年代の質と浪子
二組の男女が織りなす人間模様が重なりあい「嘘」と共に絡み合う。
『果てに来てしまったと思ったら、どんどん知らない場所に行けばいいんだよ。
それが最果ての最前線になるだろうさ。船乗りは皆、そう思う』
物語の初めで有子に対し大伯父の質が現れて語る台詞
このお話も読んでいるそのページが最果ての最前線。
2つの恋がどう重なってくるのか
読者はその最果ての最前線でドキドキする構成になっています。
いい作品ですが読後感がちょっとね。。。
ってことで★は3つ
これも男女の感じ方の違いなのかしらん
桐野作品の外れ、人物描写が弱い、肉親を描いたせいか? ★★☆☆☆
面白くなかった。理由は三つ。主人公への感情移入が出来ない。桐野作品の主人公は皆心の中に毒を持った悪い人だが、どこか徹底しているために、読者の心の闇と共鳴しはじめ、いつのまにか感情移入して読者は読んでいるが、本篇の登場人物は、どこにでもいそうな人物ばかりで、退屈。従って、感情移入が出来ない。二つ目は、誰が主人公かはっきりしない。最終的には、著者の大叔父がモデルであった質とわかるが、記述の量、質とも少なく、影も薄い。三つ。女主人公が最後に売春婦になるのだが、どうしてそうなったのか、良く分からない。グロテスクとどうしても比較してしまうから、何故?と理由を知りたくなる。しかし、彼女は実は狂言回し役であって、主人公ではないから、そこまで書かなかったのだろうか。

戦前の中国の描写はとても上手いと思うが、いまひとつな感じ。
女性の再生力を再確認 ★★★★☆
過去と現在、東京と上海が交錯する不思議な物語だった。女性の強さと弱さがうまく表現されていると感じた。自分の置かれている立場を理解して次に踏み出す勇気は男にはなかなか持ち合せていない潔さだと思う。時代を超越して登場する伯父の生き方や有子に未練を残して上海に会いに行く元恋人は、色んな柵と過去を引き摺る男の弱さの典型のようであった。
貴子じゃないよね… ★★★★★
こないだ常盤貴子主演のドラマをうっかり観てしまって以来、気になっていたのですが、上海旅行の旅のお供に読んでみて、すっかりハマッてしまいました。

今まで読んだ桐野作品(といっても「OUT」と「グロテスク」だけですが)のうちでベスト1! だと思う。

自意識過剰の主人公が自分を見失って追い詰められていく感じが、「グロテスク」以上にヤケクソながら誰にでも起こりそうな描写で真に迫っています。かつての恋人との救いの無いすれ違いもリアル。しかもラストにビックリ……のはずだったのに、ドラマで結末を知っていたので、観る前に読んでおきたかったなあ。それが唯一最大の残念!