質的研究の考え方や実践のコツを具体的に解説した充実の一冊
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私は、医療分野の研究プロジェクトに参加させていただきながら、その量的研究手法や質的研究手法について日々学んでいる者です。本書の筆者は、研究テーマに応じて量的研究手法と質的研究手法とを効果的に活用した多様かつ豊富な研究経験を有する研究者として、また質的研究に関する教育講演やスーパーバイズにも数多く携わられている教育者としても大変著名であると聞きました。私は本書の出版を知ってすぐに手に取りましたが、B5サイズの比較的手軽な本であるにもかかわらず、その内容は質的研究手法に取り組む上でのエッセンスがぎゅっと詰まっており大変充実していました。研究テーマの絞込み方法、質的データの収集方法、質的データの分析方法、質的データを用いた論文の執筆方法とプレゼンテーション方法、質的研究におけるスーパービジョンの仕方と受け方、さらには、質的データと量的データのコラボレーションについても、具体的にわかりやすく解説されています。著者自身が積み重ねてきた様々な研究の質的データとその分析過程が例示されているので解説がとても理解しやすいのですが、例示されている質的データを読むだけでも、質的データの大切さや質的研究手法を用いて研究することの有用性についても再認識させられました。研究手法を学び始めた私にとって、質的研究の考え方、実践の基本から応用までを、明瞭かつ具体的に示してくれる本書の展開はとても興味深く、読み進める中で何度も「そうそう、そこのところが知りたかった!」と感じました。私はこの本に出会うことができて幸運でした。
研究者の情熱に触れる一冊
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研究職を目指す者、あるいは質的研究を始めたい学部生・大学院生に、ぜひ読んでもらいたい。
質的研究は、いかに現状をリアルに言い当てるか、というところに醍醐味があると思う。本書では、そこに行き着くために研究者はどのような注意を払えばよいのか、実際のデータを用いて解説されている。また、質的データと量的データは対立するものではなく、補い合うこともできる、という主張は、多くのプロジェクトに関わってきた筆者だけに説得力がある。
筆者の講演を聞いたことがあるが、講演での涼やかな印象とはまた違った、研究者としての情熱を感じさせる一冊であった。自分が行おうとしている研究は「対象者が負う負担だけの社会的意義があるのか」、研究の倫理についても考えさせられた。
研究者を目指す者として、読んでおきたい一冊である。
もっちー&まめもっちー書店
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2008年5月にここから1冊のご注文をいただきました。まことにありがとうございました。第1章 質的データを用いた研究のステップ第2章 研究テーマの絞り込み第3章 質的データの集め方第4章 質的データの分析第5章 質的データを用いた論文のまとめ方第6章 質的研究結果のプレゼンテーション第7章 質的データ分析のスーパービジョン第8章 質的データと量的データのコラボレーション
国見書店
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大学院生や学部学生が論文を書き始める時に読んだ方がいいとおもう本。
(データの整理と分析の方法と、効果的プレゼンの方法が中心に書かれています。)
実践ノートという題名通り、具体な例示が多い一方で先人たちの理論との対比はあまり多くないです。そのため、質的研究をしたことのない読者にはとっつきにくい本という印象を与えるかもしれません。
ですが・・「習うより慣れよ」で、理論をひとつ勉強するのと同じくらい、先輩研究者のデータ分析の方法を観察するのが効果的だと思います。そういう意味で、具体なデータの例示はこの本の特長になっていると思います。
また、「研究者の役割を自覚して関与する」などの態度や覚悟と称されがちなことや、「何度も何度も試す、その方向性が多様であるほど、現実との適合性が高まる」などの抽象化の段階について工夫すべきことを書いている等、この本のもつオンリーワンは一見の価値あり、です。