概説としては秀逸
★★★★☆
質的研究を紹介する本は多いが、これまで読んで納得できる本にお目にかかったことがなかった。それは質的研究を十分に咀嚼し、かつ数多くの質的研究を手がけた研究者が少なかったからであろう。しかし、質的研究者としてのアイミー・ホロウェイの記述は彼女の豊富な知識と経験を想像させる判りやすいものとなっている。特に、質的研究に向けられてきた"主観性"にする部分は、認識論的な議論の紹介にとどまらず、研究としての"妥当性"をいかに考えるべきかをしっかりレビューしている。質的研究は単に調査をおこなえばいいわけではなく、こうした実証研究としての方法論をも理解した調査・分析がおこなわれなければならない。その意味で、何が重要であるかを明快にまとめている点で一読の価値がある。タイトルには"ナースのための"という言葉があるが、質的研究をおこなおうとしている保健・医療研究者に是非すすめたい一冊である。