かのヨーヨー・マが、「正真正銘の楽器による演奏」という時代の流れを手にすくったのは、当然の成りゆきだった。古典楽器演奏の第一人者トン・コープマンが発案したこのリサイタルで、マはバッハとボッケリーニを演奏している。バッハは全部が編曲だが、いずれもすばらしい。「マタイ受難曲」からアルト・アリアの「神よ憐れみたまえ」、「管弦楽組曲第3番」から有名な「G線上のアリア」、「主よ、人の望みの喜びよ」他、よく知られた6曲である。この後にボッケリーニの魅力的なチェロ協奏曲が2曲続く。これはコープマンのとっぴな即興で一段とおもしろいものになっている。マの演奏は技術と感興と音楽性がマッチして、圧倒的で絶妙極まりない。アムステルダム・バロック・オーケストラの演奏はきれいで、録音も生の体温を忠実にとらえている。楽器の「正真正銘」であるなしにかかわらず、力にあふれた演奏がすばらしい。曲の最後を飾るソロ演奏が最高に聴かせる。（Robert Levine, Amazon.com）