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金魚生活

価格: ¥1,400
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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最後の漢詩が圧巻 ★★★★☆
最後の見合いでの李白の詩を中心としたくだりは圧巻。著者はこの最後のためにこの小説を書いた気がする。
中、日の双方の漢字文化に通じた人でないと書けない下りである。

大学、高校の漢詩の授業で活用できそう。芥川賞の「時が滲む朝」にも漢詩が出てくるが、本書の最後の部分が最も印象的。
著者の長所を見つけられたかも ★★★★☆
芥川賞受賞作「時が滲む朝」に厳しいレビューを書いたが、こちらは楽しめた。
少なくとも、伝えようとしていることは伝わってくるし、主人公の感情の波が、こちらの心に小さな波紋くらいは投げかけても来る。
前半の中国での生活は、1ページに1箇所くらいの割りで、文法的に誤りではないけれども、日本語として違和感が拭えない言い回しが登場してくるためか、今ひとつ入り込めないでいたが、一転日本に来てからの話は本当に面白かった。
日本部分の方が、違和感を感じる部分も少なかったので、もしかして狙って書いているのかと思わないでもないが。
この主人公は50歳になるのだが、未だに綺麗で体型もスリムで、「日本」という異国への気後れも手伝ってか、控え目な様子に好感が持てる。
しかし一方、中国に残してきた「ただ自分を思ってくれているだけ」の同棲相手への物足りなさを表す言葉が、50にもなる女にしては幼な過ぎて、まるで20代の独身女性の述懐のようで、そこは日本語ネイティブでないことが気の毒な気になった。
きっとちょうどいい日本語が、見つからなかったのだろう…。
ただ全体として、この人独特のユーモアと感じられる部分や、あまり一般的ではないがギリギリ日本語として成立している新鮮な表現など、長所と認められる部分にも出会うことが出来たので、読んでよかったと思う。
すこし期待はずれかも ★☆☆☆☆
筒井康隆のレビューに引かれて読みましたが、私的には今一つでした。
普通の中国人の普通の感情を普通に書いている感じでなんの驚きも感動もないというのが正直な感想です。まあ数時間で読めるものなので軽い時間つぶしには良いと思いますが、期待して読むと裏切られる方も多いのではないでしょうか。若い方には良いのかも知れません。でも、ある程度人生経験のある方にはso what?という印象です。
ゆらゆら揺れる ★★★★☆
カバー写真は蜷川実花さん。蜷川さんらしい、目を射るような鮮やかな色。
作品のなかで、主人公の玉玲が着ていたコートの色は、きっとこんな赤だったのだろうな。

中国という国の変化と、その中で生きてきた一庶民の玉玲の生活が興味深い。
玉玲は、レストランのロビーの大水槽で飼っている金魚の世話係だ。
徐々に金魚に情を移していく彼女、金魚のその時どきのようす、
それらが重なりあい、玉玲の生活が金魚と共に在るものになってゆく。
玉玲には娘に言えずにいる、亡夫の友人である同棲相手がいる。

日本へ留学し、そのまま就職、結婚した娘の初めての出産の手伝いのため
玉玲が仕事の休みを貰って、日本に来てからの話の動きがおもしろい。
あらゆることどもが初体験として、彼女を揺さぶり、心もとなくさせる。
ことばがわからない国での日常が、玉玲を自分に向き合わせる。
そして、娘からの“日本人男性との再婚”の勧めがあり、玉玲の心は揺れに揺れる。
五十歳。未亡人。これからの生活。一見、豊かで贅沢な国、日本。
楊さんはしかし、「森田」という日本に帰化した中国人の、自称セレブの知人を
配することで、経済的な豊かさが幸福をもたらすとは限らないことを描く。
金魚色のコートが、日本では異常なくらい浮いてしまう、その感覚、センスの違いを
玉玲は肌で感じざるを得ない。
お見合いの席での、漢詩のやりとりは切なかった。
しかし、金魚の刺繍の財布から、指輪を取り出すラストは、
ほんとうに映像的で忘れ難い印象を残す。

読むうち、「ん?」という感じで、少しばかり引っかかる言い回し、漢字の使い方なども
あるにはあったけれど、充分楽しめた。 
金魚色のハーフコートが… ★★★★☆
日本で暮らす娘が日本で出産するのを機に、中国から来日した玉玲。夫に先立たれた玉玲は、夫の仲間だった周彬と、じつは中国で同棲しているのだが、娘には、なんとなく言えないでいる。日本に生活の基盤をおく娘に、日本人と再婚して、近くで暮らさないかと持ちかけられると、娘や孫のことも気になることだしと、周彬のことを言い出せないまま、お見合いを重ねてしまう。

玉玲がお見合いをした三人の日本人男性のタイプは、本当に三者三様で、しかも妙にリアリティーのある描写(たとえば、やたらと「ニーハオだもんな」とかいう)が多かったので、おもしろかった。でも何よりも心に残ったのは、周彬と彼にまつわる金魚色のハーフコートのエピソードとその扱いである。せつないし、痛かった。

楊逸の小説は、『ワンちゃん』『時が滲む朝』、そしてこの『金魚生活』と読み進めてきたが、今回の『金魚生活』が一番よかった。