1980年のジョン・レノン殺害に衝撃を受けたポールは、この事件についてほぼ口を閉ざしてしまう。そんな状態は1982年の本作『Tug of War』まで続いた。本作に収録された「Here Toda」で、ポールはやっと昔の仲間への愛情を吐露したのである。「僕がまだ生きてることを彼は笑い飛ばすだろうな」――ポールはそうもらす。
プロデューサーにジョージ・マーティンを起用したことで、本作はポールのアルバム中もっとも堂々とビートルズっぽさを打ち出した作風に仕上がった。伝説のロカビリー・アーティスト、カール・パーキンスがちらりと顔を見せるほか、2曲でスティービー・ワンダーが登場。ファンキーな「What's That You're Doing」と、超の付くシンプルさが見事な効果を上げるヒット・シングル「Ebony and Ivory」がその2曲だ。(Daniel Durchholz, Amazon.com)