ビクトリア朝時代の文豪ディケンズは、社会風刺を得意とし、当時の厳然たる階級社会を支えていた残酷さや不合理さを容赦なく描写した。今回、見事に映像化された『われらが友』は、ディケンズの著作の中でも特に謎めいて複雑な内容を持つ同名の小説の魅力を余すところなく再現しており、風刺に満ちた原作の骨組みが誇張を排した演技によって細部まで充実したものとなり、心理描写にも奥行きが出ている。
   ベラ（アナ・フリエル）は非常に複雑な人物で、天性の善良さと、金銭欲、上昇志向とがせめぎ合っている。ポール・マクガンもフリエル同様すぐれた演技を見せ、リジーへの思いをどうやって伝えようかと迷うレイバーン弁護士を演じている。さらに言うまでもないがディケンズの原作同様このBBCのドラマにも、人体骨格組み立て業を営む失意のビーナス氏（ティモシー・スポール）をはじめとする、すばらしい脇役が登場する。登場人物の運命が浮き沈みするのに合わせ、この驚くべき物語の背景でテムズ川は絶えず象徴的に流れ続ける。6時間の長編ドラマだが、長すぎるとは感じさせない。ミステリーでもあり、ラブ・ストーリーでもあり、富と地位を追い求める姿を批評したものでもあるこのドラマは、これまで映像化されたディケンズの作品の中でも出色の出来であると言えるだろう。(Simon Leake, Amazon.com)