Shalimar the Clown
価格: ¥1,248
現代文学の第一人者が送る、心をとらえる新作。世界を舞台とした、古今のあつれきから生まれる愛と復讐の物語だ。
1991年、ロスアンゼルス。世界情勢の鍵を握る人物のひとりであるマクシミラン・オフュールス大使が殺された。白昼、私生児の娘インディア宅の玄関先で、カシミール生まれのイスラム教徒の運転手により、ナイフで殺害されたのだ。この男は自らを“道化のシャリマー”と名乗っていた。被害者は第二次世界大戦に反対したことで有名なカリスマティックな人物で、恐るべき知性をもち、米国大使としてインドに駐在後、アメリカのテロリズム対策の指導者を務めていた。当初は政治的暗殺のように見える事件だが、後に個人の激情によるものと判明する。
これはマクシミラン・オフュールス、彼を殺した男、彼の娘、そしてもう一人、最後に事情をすべて明らかにする女、4人の物語である。カリフォルニアからカシミールへ、ナチス占領下のヨーロッパからテロリズムが横行する現代の世界へと移動する、叙事詩が語られる。人の思いやりがあり、奇跡を生み出す不思議な力があり、いつ果てるとも知らない醜い戦争がある。そしてそこには一貫して、得ては失われる、美しく致命的な危険性を秘めた愛がある。
すべてが不安定で、すべてがつながっている。暮らしは根こそぎにされ、名前は変わり続ける。永続的なものは何もない。どこかの物語は、あらゆる場所の物語でもある。世界を舞台に、歴史を駆け抜けるラシュディの物語は、読者の心と不穏な時代の精神をとらえる。