The Closers (A Harry Bosch Novel)
価格: ¥832
昨年の『The Narrows』をはじめとするコナリーのスリラー作品のヒーローとして知られる、ロスアンゼルス警察の刑事ハリー・ボッシュが、2年の不在を経て現場に戻ってきた。未解決事件の課に配属され、元パートナーのキズミン・ライダーと組んだカムバック初仕事は、17年前に起きた高校生の殺人事件。武器の拳銃から検出された血液が、DNA合致したために再開されたものだ。この設定からはお決まりの手法も可能だが、コナリーの場合そうはならないし、暴力的なアクションを盛り込んで話を進めることもない。実際のところ、暴力はないに等しい。コナリーとボッシュの世界で重要なのは、登場人物、背景、捜査法であり、作者はまたしても、そのすべてに最高の手腕を見せている。拳銃についていた血液は、地元の卑劣な白人優越主義者、ローランド・マッケイのものだ。しかし血液が証明するのはマッケイが拳銃を所有していたことだけ。一体どうやって奴が犯人だと証明すればいいのか? コナリーは精彩な筆致で読者を誘い、ボッシュとライダーはマッケイへのつながりをたどるうちに、過去の捜査に警察の陰謀が関わることを見いだしていく。
この小説は驚くべき道義的な力に満ちているが、その展開の中で極めて際立っているのは、このコンビが何年も前の犯罪の“波紋”を調べていく下りだ。この事件が少女の家庭を崩壊させたこと―母親は過去から抜けられず、父親は酒に逃げるホームレスに落ちぶれている―。そして二人のうちことにボッシュが、自らの人生の意味を深く理解するようになること。ドストエフスキーの犯罪文学に今日もっとも迫るのがコナリーであり、その彼の最高作品にあげられるこの小説は、図書賞はもちろん大ベストセラーの候補になるだろう。