どうしてだろう?
★★★★★
おもしろい。日常的で普遍的なテーマ。なのにものすごくおもしろく読める。普通のことを書いてこれだけ『先を読みたい』って思わせるってすごいことだな。青春って言葉が素直に思い浮かんでくる。イサと栄の安心感のある切なさが読んでいて気持ちいい。現役高校男子に読んでほしい本。
心境がリアルに伝わってくる
★★★★★
大人に囲まれた子供の心境というのが細かい描写で非常に良く伝わってきて、自分の子供の頃の記憶と重ねつつぐいぐいと読み進むことが出来た。全体的に大人しい雰囲気の作品なのに強く惹きつけるものがあるのは、節々に見られるイサムの心の描写が細かくリアルだからなのだと思う。その中で主人公イサムの周囲の変化と本人の成長という一本のスジがしっかり通った話になっているのが、読んでいて心地良かった。
懐かしい時代
★★★★☆
椎名誠の小説はいつも軽快で男らしい。昭和30年代と思われる時代を背景に、時代のうねりの中で、主人公の少年イサムの成長が素直に描かれている。どうしてもイサムに自分自身を投影してしまうのは、オジサン世代の宿命であろうか。懐かしい昭和30年代を彷彿とさせる秀作である。
2つの海を舞台にした青年の季節を描く
★★★★★
自伝的小説「黄金時代」(文藝春秋)と同姓同名の主人公が出てくるが、物語の設定は微妙に異なっている。椎名誠の青春小説の佳作「麦の道」(集英社)とトーンが似通った話かも知れない。ジョンという犬が出てくるのだが「犬の系譜」(講談社文庫)も思い出した。抑えた筆致で珍しく暴力的気配もほとんどないのだが、昭和30年代の千葉を舞台にした物語はぐいぐい読ませる。知られざるドラマを抱えたようなある種の父親変わりでもある叔父さんとの交流。兄弟との関係。中学卒業後に進学した全寮制の専門学校での数々のエピソード。そして煌くストックな恋。椎名誠が描く青年は「まあ、いいや」と世界に対して諦念と構えることが多いのだが、本書ではひたすら健全で前向きだ。